Androidの激震
LTEに期待するのは端末メーカーだけではない。LTEでは基幹通信網がIP(internet protocol)ベースになる。既存の携帯電話業界のメーカーだけでなく,コンピュータ/IT業界も熱視線を送る。携帯電話網のIP化によって,インターネットのサービスをより多く導入できると,関連業界の大手メーカーがこぞって携帯電話市場への参入を表明した。
中でも携帯電話業界を大きく揺るがせたのが,米Google Inc.の携帯電話用ソフトウエア・プラットフォーム「Android」の登場である(図6)。OSやミドルウエア,ユーザー・インタフェース,Webブラウザーや電話帳などの標準的なアプリケーション・ソフトウエアを含んだもので,これらを載せるだけでインターネットに接続できる携帯電話機を実現できる。Google社はこうしたソフトウエア・プラットフォームを無償で供給することによって,インターネット接続が可能な携帯電話機の価格を下げ,携帯電話機からのインターネット・アクセスを増やすことを目指している。
Androidの登場によって,これまで機器メーカーや携帯電話事業者が中心になって手掛けてきた機器の開発やサービスの提供に,全く異なるメーカーや事業者が参入できる可能性が広がる。いわば,携帯電話機のパソコン化のような事態が生じるのだ。Androidというオープンなプラットフォームが登場することで,携帯電話事業者は自社で提供しているコンテンツ関連サービスを他社に奪われかねない。また,携帯電話機は,パソコンのように参入障壁の低い機器になる可能性もある。
既に米Apple Inc.の「iPhone」のように,さまざまなソフトウエア・サービスが端末上で利用可能になったものも登場している(図7)。Google社やApple社のような格好で,今後多くの企業が携帯電話業界に乗り込んでくることになろう。端末メーカーでも今後,生き残り競争が厳しくなりそうだ。
パソコン市場で生き残っているメーカーがたくさんあるように,オープンな世界でも勝ち残り策はある。重要なのは,他社にない独自の特徴である。特徴の出し方は何通りもある。端末によっては,720pといったHDTV映像を処理できる機能や,プロジェクター機能を搭載する機種も登場することだろう(図8)。こうした機能向上が,LTEやAndroidといった技術が普及する時代においても,機器の差異化に不可欠な要素となりそうだ。