そして,技術の開発スタイルには新たな要素が加わる。「オープンソース」だ。特定の企業に属さない世界のプログラマーが一丸となって,新しいソフトウエアを生み出す。メインフレーム時代のように,1社がすべてを手掛けていた開発スタイルから見れば,隔世の感がある。新しい技術開発が企業という壁を大きく越え,企業間の連携だけではなく,個人の集合体によってイノベーションがもたらされる時代を迎えている。

クロック周波数,30年で3万倍

 さて,こうしたコンピューティング環境を実現するために,その核となる技術のマイクロプロセサはどのように進化を遂げてきたのだろうか。

 マイクロプロセサの性能を上げる手段は二つある(図2)。一つは,クロック周波数を高めること。もう一つは,アーキテクチャ(内部構造)を工夫することである。

図2 マイクロプロセサの性能をいかに向上させるか
図2 マイクロプロセサの性能をいかに向上させるか

 クロック周波数の向上は,1971年から30年間は,順風満帆だったといえる。半導体の微細化を推し進めることがそのまま,クロック周波数の向上につながり,2年で2倍のペースを維持してきた。最新のマイクロプロセサは3GHz超と,4004の3万倍である(図3)。

図3 クロック周波数の推移
図3 クロック周波数の推移

 ところがクロック周波数が3GHzを超えたあたりから,新たな問題に直面した。微細化が進むにつれて,半導体を動作させていないときにも電流が流れてしまう,いわゆる漏れ(リーク)電流の問題が深刻化したのである。5GHz以上で動作する試作品は作れども,漏れ電流による消費電力が見逃せないレベルとなり,実用化が極めて困難な状況に陥っている。過去5年以上もの間,クロック周波数は頭打ちだ。漏れ電流の対策技術も開発されてはいるが根治療法はなく,今後もクロック周波数の踊り場状態は続くことになりそうだ。