その一つが,空間多重のMIMO(multiple input multiple output)技術である。無線LANの世界ではIEEE802.11nで初めて採用された技術だが,ワイヤレス・ブロードバンド・サービスを実現する技術として使われ始めた。2009年に商用サービスが始まるモバイルWiMAX(IEEE 802.16e)や次世代PHSのほか,2010年の商用サービスが予定されているLTE(long term evolution)でもMIMOが採用される。

 一方の無線LANも,さらに速くなる。2008年末から2009年にかけて「スループットで1Gビット/秒超」を目指した標準化作業がスタートした。二つのタスク・グループ「IEEE802.11ac」と「IEEE802.11ad」が発足した。IEEE802.11nの技術をベースにしつつ,IEEE802.11acではOFDMやMIMOを拡張することで高速化を図る。IEEE802.11adでは高速化の手段としてより広帯域のミリ波(60GHz帯)を利用する。

 そしてデータ通信技術の元祖といえるEthernetは,いよいよ最大データ伝送速度が100Gビット/秒に到達する。幹線系の高速化技術として定着した波長多重のWDM(wavelength division multiplexing)技術を導入する。

 このようにオフィスや家庭はもちろん,インターネットへのアクセス回線,サービス事業者のバックボーンまで高速化は続いていく(図6)。

図6 高速化は止まらない
図6 高速化は止まらない

 日本のインターネットの総トラフィックは,2009年に入って1Tビット/秒を超えた。しかもその増加のペースはムーアの法則を上回り,1年で1.7倍という高い成長率である。このペースを支えるために,ネットワークの高速化はまだまだ止まるわけにはいかないのだ。