競争に勝って生き残ったEthernet

 Ehternetの歴史を振り返ってみると,10Mビット/秒のより対線Ethernet規格「10BASE-T」が登場して以来,最大データ伝送速度が4年で10倍になるペースで高速化が進んでいる(図3)。その道のりは,他のLAN技術との競争の歴史だった。これらの競争に勝ち,Ethernetは成長を続けてきた。

図3 Ethernetの高速化と競合の歴史
図3 Ethernetの高速化と競合の歴史
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 最初の競争相手は米IBM Corp.が開発したトークン・リングだった。1980年代後半のことである。当時のEthernet規格は,同軸ケーブルを使う10BASE5や10BASE2だった。ここに,トークン・リングは(1)配線により対線が使える,(2)コンセントレータと呼ぶ装置を使ってスター型のLANを構築できる,(3)トークンと呼ぶ特殊な制御フレームで送信権を確保する効率的なアクセス制御方式,といった三つの特徴を武器に,一時はLAN市場でIBMブランドとともにかなりの存在感を示した。

 この競争に終止符を打ったのは,1990年に規格化された10BASE-Tである。より対線が使える10BASE-Tは,そのころ登場し始めたマルチポート・ハブ(集線装置)によってスター型のLANが構築できるようになった。こうなると,プロトコルが単純な10BASE-TはLSI化が容易で安価に作れるため,価格面でトークン・リングを圧倒した。

 次のライバルは,1990年代前半に登場したATM LANである。ATM LANはLANエミュレータと呼ぶ技術を搭載して,本来はコネクション・オリエンテッド通信のATMで,Ethernetのようなコネクションレス通信を実現した。オールATMネットワークの先兵としてワークステーション用ボードが発売されたものの,ここでもATMの複雑さと高コストがあだになって消えていった。