電界と電流,二つの方式で
消費電力や伝送速度を競う各社
人体通信は信号の伝送方法によって,電界方式と電流方式の2種類に大別できる(「絶縁しても使える電界方式,電磁雑音に強い電流方式」を参照)。現在,国内ではNTTやアドソル日進,カイザーテクノロジーが電界方式を,KDDIと松下電工が電流方式を採用して,それぞれ独自に技術開発を進めている(表1)。
起爆剤の一つとなったFirmoは,電界方式を採用したNTTのRedTactonの製品化の第1弾で,製造・販売をNTTエレクトロニクスが担当している。7mm厚のカード型ID送信機と,電界を検知するセンサ電極を備えた受信機からなる。5MHz帯の搬送波を利用し,ID番号を約230kビット/秒で繰り返し発信する。ドアノブや床に埋め込んだ受信機がID信号を受け取って作動する。
送信機,人体,受信機とも接地面と容量結合しているために浮遊容量の変動が大きくなるという課題があった。NTTは,浮遊容量に応じてリアクタンスを調整するマッチング回路に工夫を凝らすとともに,受信側での電磁雑音を低減するなどして200kビット/秒以上の伝送速度を実現した。入退室管理だけでなく,プリンターや複合機と組み合わせて印刷物のセキュリティーを確保したり,キャビネットの施錠/解錠などに使ったりといった利用方法を想定している(図4)。