1970年に10μmだった半導体の加工寸法は,最新のLSIで50nm付近にまで小さくなった。なんと1/200の大きさである。この微細加工の技術がコンピュータの進化を促し,デジタル家電や携帯電話機を生み出す原動力となった。チップ面積当たりの集積度が18カ月で2倍になる「ムーアの法則」を支えているのは,まさにこの微細加工の技術である。
微細加工技術は40年もの長きにわたって,ほぼ同じペースを守っている。その歴史を振り返ると数多くの要素技術の積み上げで成り立っており,常に限界論との戦いだった。技術者はその限界を,ことごとく突破してきた。
今,微細加工技術は大きな曲がり角に差し掛かっている。物理限界,製造・設計限界,事業限界が一気に押し寄せているからである。このまま微細加工の進化は止まってしまうのか,微細化が止まると電子機器の将来はどうなるのか,微細化以外に機器の進化を実現する軸はあるのか。半導体のみならず,エレクトロニクス業界全体が大きな変曲点を迎えている。
微細化は半導体の進化の指導原理
半導体の加工寸法は,3年間で60~70%に縮小してきた(図1)。面積でいえば,寸法70%縮小の場合に49%とおよそ半分,寸法60%縮小の場合には36%と1/3近くになる。この微細加工による面積削減と,回路上の工夫によって「ムーアの法則」,すなわち1年半で2倍,3年で4倍の集積度を実現してきた。
微細加工の進展で得られるものは,集積度だけではない。性能(スイッチング速度)は3年で1.4~1.7倍に向上し,同時にコストは3年で1/3~1/4に下がる。1946年に登場した真空管方式のコンピュータ「ENIAC」の大きさは900m3,性能は0.05MIPSだったが,現在,手のひらサイズのパソコンでも104MIPSを実現できるようになったのは,この微細化のおかげである。
性能が向上し,コストが下がり,技術進化とともにアプリケーションを増やしながら,半導体市場は急速に拡大してきた(図2)。1970年代,1980年代を通して30年以上もの期間にわたり,半導体市場規模は年率平均17%のペースで成長しており,現在は30兆円弱の規模に達している。