IMT-Advancedへの技術提案を目指す方式は,LTE-Advanced以外にも,WiMAXを拡張するIEEE802.16mや,無線LANの標準化をすすめるIEEE802.11委員会が立ち上げたプロジェクト「IEEE802.11 VHT」など,複数存在する(表3表4)。IMT-Advancedの標準化に関しては,3GであるIMT-2000の標準化の際と同様に,複数の伝送方式が併記されるだろう。そのうちの一つとしてLTE拡張技術が採用されるのは,ほぼ確実と言えそうだ。

表3 IMT-Advancedへの技術提案を協議する機関の例
表3 IMT-Advancedへの技術提案を協議する機関の例
表はITU-Rの資料を基に本誌が作成
表4 次世代WiMAXと次世代無線LAN
表4 次世代WiMAXと次世代無線LAN

将来は100MHz帯域幅の利用も

 ITU-Rは方式決定に先んじて,2007年に開催された世界無線会議「WRC(World Radio Conference)-07」で,IMT-Advancedが利用する世界共通の周波数帯を決定した。例えば,3.4G~3.6GHzの200MHz幅,2.3G~2.4GHzの100MHz幅などが明記されている注2)。仮に100MHz幅が利用可能になれば,現状の5倍程度,速度を高めることが可能になり,最大伝送速度1Gビット/秒が夢でなくなる。

注2)割り当てられた新たな周波数帯は,3.4G~3.6GHzの200MHz幅,2.3G~2.4GHzの100MHz幅,698M~806MHz(地域によっては862MHzまで)の108MHz幅,そして450M~470MHzの20MHz幅である。このうち3.4G~3.6GHz帯に関しては,世界で 100カ国以上がIMT向けとして認めているが,IMTへの割り当てを認めていない国もある。例えば東南アジアの国では,同帯域を衛星通信に利用する地域もあるためだ。

 WRC-07で新たに割り当てられた帯域は,厳密にはIMT-Advancedだけに割り当てられたわけでない。現行3Gや3.9Gでも利用可能である。つまり,現行のLTEシステムを,3.4G ~3.6GHzといった広い周波数帯に適用することも不可能ではない。

 ただし,WRC-07における取り決めは,もともと第4世代であるIMTA-dvancedに向けて開放することを目指して検討が進められたという経緯があるため,国や地域によっては,IMT-Advancedでなければ利用できないという制限を独自に課す可能性もある。例えば日本の総務省は,3.4GHz~3.6GHz帯などに関しては,4Gの利用を前提とすると発表している。国内における3.4G ~3.6GHz帯の利用は,LTEではなく,LTE-Advancedとしての標準化が終わってから,という格好になりそうだ。