進化の方向性は三つ

 LTEは今後,100M~1Gビット/秒と,伝送速度をさらに高速化する方向で進化を狙う。このために最も効果が大きいのは,より広い周波数帯域幅の利用である。

 LTEは当初,5MHz幅の周波数を使ってサービスを開始するだろう。現行3Gに割り当てた帯域をそのまま適用できれば,新たな帯域獲得への投資などが不要になり,携帯電話事業者にとって現実的だ。地域によっては,高速データ通信向けに20MHz幅程度が利用可能になるかもしれない。欧州で開放が進む2.6GHz帯などは,その例である。

 将来,もっと広い帯域をLTEで利用するための取り組みも進んでいる。国際電気通信連合の無線通信部門であるITU-Rが標準化を狙うIMT-Advancedである。IMT-Advancedは,静止時で1Gビット/秒,高速移動時でも100Mビット/秒超のデータ伝送の実現を目指す規格で,いわゆる4Gに相当する。2009年2月から技術提案の受け付けを開始して,2011年初頭に仕様が凍結される予定である(図2)。

図2 IMT-Advancedの提案受け付けは2009年2月から
図2 IMT-Advancedの提案受け付けは2009年2月から
IMT-Advancedに向けた技術提案の受け付けは,2009年2月に始まる。提案の締め切りは2009年10月である。その後,提案技術を評価しながら,各提案の一本化などによる合意形成も進める。2010年2月から,勧告の作成に入り,2011年春までに勧告作成を終了する予定。(図:ITU-R,ARIBの資料を基に本誌が作成)

 LTEの標準化を進めている3GPP(The 3rd Generation Partnership Project)は,IMT-Advancedへの提案を狙ったLTEの拡張技術の検討を開始している。名称は「LTE-Advanced」である。3GPPは2009年前半までにLTE-Advancedの内容を固め,各国や地域など,実際にITU-Rに対しての提案権を保有する組織に対して,採用を働き掛けていく方針だ。

 IMT-Advancedの最低要求仕様に関しては,既に合意が得られている(表2)。この値は周波数利用効率などいくつかの点で LTEのスペックを下回る。現状のLTEは3.9Gという位置付けだが,今後のIMT-Advancedの仕様策定の議論次第では,4Gの仕様として規定される特性値が,LTEを下回る可能性もある。

表2 IMT-Advancedの最低要求仕様とLTE仕様の比較
表2 IMT-Advancedの最低要求仕様とLTE仕様の比較
表はITU-Rの資料を基に本誌が作成