次世代のモバイル・ブロードバンド技術として本命視されるLTE。
2012 年ごろには速くて安い,ユーザーに不満を感じさせない
移動体通信が本格化する。
LTEのインパクトは,それだけではない。
世界中の通信事業者が同一の方式に集まることで,
瞬く間にコモディティー化する可能性が高い。
携帯電話機だけでなく,パソコンやさまざまな家電に
LTEが入ってくることになる。
この新しい状況をどのように生かすかが,
すべての機器メーカーに与えられた課題となる。

 一般に「第3.9世代」(3.9G)と呼ばれる次世代の移動体通信方式。その本命が,標準化団体の3GPP(3rd Generation Partnership Project)が策定する「LTE(long term evolution)」である。最大で100Mビット/秒を超えるデータ伝送速度と,常時接続しているかのように感じられるほど短い接続遅延時間を実現するLTEへの移行は,2012年ころに本格化する。それも,単一の方式が世界中で一気に普及する。ユーザーにとっては「料金が安くて速く,常時接続的に使える」(図1)。機器メーカーにとっては「部品コストが低くて通信能力に余裕がある」。そうした「いいことずくめ」の次世代モバイル・ブロードバンドが,すぐそこに迫っている。

図1 今のケータイへの不満を解消
図1 今のケータイへの不満を解消
LTEの導入は,料金の高さや通信の遅さといった現在の携帯電話サービスへの不満を解消する。周波数利用効率や基地局の通信スループットを高める新しい無線技術の導入,ネットワーク接続時の操作感を損なう遅延時間の短縮などによって実現する。

 エレクトロニクス・メーカーに求められるのは,この大きな変化をうまく活用する工夫だ。役割を担うのは,これまで携帯電話機や携帯電話向けサービスを開発してきた企業にとどまらない。「これからの機器やサービスで,次世代モバイル・ブロードバンドをどのように生かすべきか」。この問いに対する正しい答えを導き出せた企業に,大きな勝機が訪れる。

LTEを見据える携帯電話事業者

 最大で100Mビット/秒前後のデータ伝送速度を実現する移動体通信の次世代方式には,二つの有力候補がある。LTEと「モバイルWiMAX」だ。LTEは既存の携帯電話ネットワークの拡張に向けた方式であり,モバイルWiMAXは高速データ通信の実現に向けてIEEE802.16eとして標準化された方式である。