こうした機能は,カメラのユーザー体験を大きく向上させる。搭載商品は「第2世代のデジタル・カメラ」として消費者に認識され,幅広く受け入れられるだろう(図2)。
見たいから撮っている
オート・シャッター機能や画像選択支援機能について,カメラ・メーカーの技術者やカメラ愛好家から決まって出てくる反発がある。「カメラを操る喜びが損なわれる。余計なことはすべきでない(しないでほしい)」というものである。こうした意見自体はカメラが好きな人からみれば間違いなく正しい。クラシック・カメラが根強い人気を誇ることから明らかなように,一定のユーザー層はカメラが持つ不自由さを逆手にとって「だから楽しい」といえるスキルや感情を持っている。
しかし,大多数の消費者は違う。富士フイルムによると,「フルオート撮影のみで撮っている」という人が同社製品のユーザーの少なくとも7割を占めている。こうした傾向にあまり地域差はない。写真に対するこだわりが強い顧客が多い同社の場合でこれほど高いのだから,ほかのメーカーの顧客は推して知るべしである。
オート・シャッターや画像選択支援は,大多数のユーザー・ニーズに合致した機能だといえる。大半のユーザーにとってカメラは道具でしかない。カメラを使う目的は画像の取得であり,そしてその画像がもたらす思い出や人とのコミュニケーションに富んだ生活にある(図3,「『はい,チーズ』を大切に,オート・シャッターでも残すべき体験」参照)注2)。
注2) QV-10や「EX-S1」(初代EXILIM),そして今回のEX-F1を企画したカシオ計算機の中山仁氏はいう。「理想的なカメラとは,誰も彼もが所望の画像をスッと撮れるもの。大半の消費者にとって,撮る本当の目的は,画像を見て感動を再現したり,友人や家族に見せて共感してもらったりすることにあるのだから」(中山氏)。一方,キヤノンでカメラ商品企画部長を務める前野浩氏は,消費者を2種類に分けて考える。「ユーザーがカメラを使う目的は『趣味を撮る』もしくは『趣味で撮る』,このどちらかしかない。ライト・ユーザーは前者。自分の好きな光景・人・モノ,すなわち趣味を撮る。ヘビー・ユーザーもこれらを撮るが,それ以上に撮ること自体が好き。つまり趣味で撮っている」(前野氏)。