2040年頃には団塊の世代が平均寿命を迎え、年間死亡者数は167万人でピークを迎えるといわれている。約8割が病院で看取られている現状に変化がないとすると、41万人の看取り場所がなくなる計算になる。

 地域包括ケアシステムの構築を急がなければならない理由の1つに、この“自宅看取り40万人時代”に必要な体制づくりがある。メディヴァ 代表取締役の大石佳能子氏は、「国際モダンホスピタルショウ2015」(2015年7月15~17日、東京ビッグサイト)のホスピタルショウカンファレンスで、「地域包括ケアシステムの実現を目指して」と題して講演。地域包括ケアシステムと在宅医療のあり方、多職種連携を支援するためのICT活用について語った。

メディヴァの大石佳能子氏
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 大石氏は冒頭、日本の高齢化率上昇の問題は、超高齢化社会に対応するシミュレーションやインフラ整備が追いつかない速度で高齢化が進行していることにある指摘。「走り高跳びを、助走なしで飛べといわれている状況。いかに短期間で超高齢化社会に対応した社会システムを構築できるか、世界が注目している」(大石氏)と述べた。

 後期高齢者の激増はマクロレベルでの“虚弱集団”の出現であり、「その先には“多死社会”が待っている」と大石氏。厚生労働省の人口動態推計、国立社会保障・人口問題研究所の日本の将来推計人口によると、2040年頃に年間死亡者数は167万人のピークに達する。現在、死亡診断場所は病院が約8割、残りの2割を自宅、老人ホーム、介護老人保健施設などである。「今後、病床数は減ることはあっても増えることはなく、仮に病院での看取りが一定だとすると、41万人の方の看取り場所が足らなくなる」(大石氏)とし、在宅医療・在宅看取りの担い手を育成していくことの必要性を訴えた。

 在宅療養支援診療所(在支診)の届出数は約1万4000軒、診療所全体の14%。国は診療報酬による誘導で担い手を増やそうとしているが、「現実は在宅患者20人以下が84%を占め、43%が看取り実績がない。地域包括ケアシステムを支える在支診になり得ていない」と指摘。「外来をやりながら在宅医療にも取り組むという開業医に頼るという仕組みは、たぶん2025年まで保たない。組織だって在宅医療を専門的に行う施設を育成していく必要がある」と強調した。そして、“自宅看取り40万人時代”に必要な体制として大石氏は、在宅医療に特化した体制を整備した在支診(年間100人の看取り)を、現在の56クリニックから2000クリニックに増やすことで、半数の年間20万人の看取りに対応する必要があると説いた。