セコム医療システムの國本陽子氏
セコム医療システムの國本陽子氏
[画像のクリックで拡大表示]

 訪問看護や訪問介護、通所介護などを手掛けるセコム医療システムは、2014年3月から訪問看護の現場にモバイル端末とICTシステムを導入している。その導入の経緯や導入後の効果などについて、同社 訪問看護ステーション看護部の國本陽子氏が「国際モダンホスピタルショウ2015」(2015年7月15~17日、東京ビッグサイト)で報告した。

重複記録や連絡の難しさがICT導入に向かわせた

 同社がモバイル端末の導入を模索し始めたのは、こんな背景からだ。訪問看護は主治医の指示に沿ってサービスを提供するため、主治医との連絡・情報共有は必須。加えて、介護サービスや入浴介助サービスの事業者などとの連携も必要になる。訪問のたびに患者に看護記録を渡す必要がある上に、家族と連絡帳でやりとりすることもある。このため、スタッフは同じ情報を複数の書類に記載しなければならないことが多かった。

 また、同社の事業所は1カ所につき10人前後のスタッフを抱えているが、それぞれ自転車などで移動しながら働いており、互いのサービスの邪魔をせず、かつタイムリーに情報を共有し合うことが難しかった。さらに、カルテは事業所にあるため、訪問先でさまざまな判断をする際、記憶に頼る場面もあった。

 こうした課題を解決するため、同社は訪問先から訪問看護ステーションへ、看護記録や写真、動画などをリアルタイムに共有できるICTシステムを導入した(当時の発表資料)。全国33カ所の事業所で働く約280人のスタッフが、タブレット端末「iPad mini」を持ち運んで使うようになった。記録・連絡ができるほか、カルテやスタッフのスケジュール、訪問先の地図なども端末から確認できる。端末を使って随時、医師への相談もできる。医療情報はセコムの「セキュアデータセンター」に格納し、端末側には情報が残らないようにした。