東京大学医学系研究科医療経営政策学講座 一般財団法人医療情報システム開発センターの山本 隆一氏
東京大学医学系研究科医療経営政策学講座 一般財団法人医療情報システム開発センターの山本 隆一氏
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 東京大学医学系研究科医療経営政策学講座 一般財団法人医療情報システム開発センターの山本 隆一氏は2015年7月16日、「国際モダンホスピタルショウ2015」の病院経営フォーラムに登壇、「マイナンバー制度の医療分野での活用について」と題して講演した。

 冒頭、山本氏は日本医師会の「医療分野等ID導入に関する検討委員会」が2015年7月15日に提出したばかりの中間取りまとめに言及した。日本医師会は2014年11月に日本歯科医師会、日本薬剤師会と合同で「医療IDに係る法制度整備等に関する声明」を発表、そこでマイナンバーを医療現場で利用することに反対するとともに、マイナンバーとは異なる医療分野専用の符号である「医療等ID」とそれに関連する法制度を整備する必要性を提言した。

 山本氏が委員長を務める医療分野等ID導入に関する検討委員会はその声明を受けて、医療等IDの基本的な考え方、番号発行の方法や記載媒体などを検討している。15日に提出した中間取りまとめでは「マイナンバーそのものではなくマイナンバーの仕組みを使った医療等IDを積極的に導入していこうということが書かれている」(山本氏)という。

 山本氏によると、現在の医療分野では個人を識別するIDを組織ごとに割り振るため、医療や健康に関するデータを横断的に収集することが難しいという。例えば、沖縄県浦添市で個人の健康・診療データを取りまとめて特定保健指導に利用しようとしたところ、IDの問題で実現できなかった。浦添市では社会人の多くが那覇市の事業所に勤務しており、それらの定期健診データは那覇市の医師会が勤務先の社員番号を使って管理している。このため、浦添市内の医療施設が持つ診療データとの突き合わせができなかったのだ。名前で個人を特定することも考えたが「沖縄には同姓の方が多いため、名前だけで個人を特定することは難しかった」(山本氏)。