筆者が日経テクノロジーオンライン(当時はTech-On!)に初めて書いたレポート記事は、今から12年前の2003年に韓国テグ市で開催された「IMID(International Meeting on Information Display)」の展示会に関する内容だった(当時の記事)。

 この時は、韓国のSamsung Electronics社注1)とLG.Philips LCD社注2)がPDPに負けじと大型アモルファスSi(a-Si)TFT液晶パネルの大きさを競い合っており、韓国のフラットパネル・ディスプレー(FPD)の展示会に参加すれば世界最大級の最先端FPDがほとんど見られるという時代だった。この韓国の2大FPDメーカーが切磋琢磨することによって生み出された新技術や新製品がなければ、FPD市場もこれほどまでは拡大していなかっただろう。

注1)その後、Samsung Electronics社の液晶パネル事業は分社化され、現在はSamsung Display社が担当している。

注2)現在のLG Display社の前身。

 今年(2015年)の「SID(Society for Information Display)」の展示会を見て最も印象的だったのは「ついにSamsungが展示をやめてしまった」ということである。世界中の様々な展示会の中でも技術力の優位性を示すのに最も適した場としてSIDを位置付け、他社を圧倒するような量と質の先端技術を毎年披露してきた、あの王者Samsungが、である。筆者もSIDの展示会に来たら、まずはSamsung社のブースをチェックするのが楽しみだっただけに大変残念である。一つの時代が幕を閉じたのだということを改めて実感させられた。