ポスターのように丸めて運んで壁に取り付けられる。そんなLED照明が、ミラノサローネにある、慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)のブースに展示された。

 このLED照明に技術を提供したのが、AgICである。同社は導電性インクを利用した電子工作キットや、家庭用プリンターで導電性インクを印刷可能にする技術に強みを持つ日本のベンチャーである。プリンターだけでなく、導電性インクを詰めたペンで紙の上に線を描くだけで、簡単に配線できる。導電性インクには、Agナノ粒子を配合した三菱製紙のものを利用している。

 今回出展したLED照明は、大きく2つある。1つは、LEDを2枚の紙で挟み込んだ構造を採る「slice of light」。下地の紙に導電性インクで配線を描き、そこに複数個のLEDを実装。その上に、光を透過する特殊な紙をかぶせている。LEDの光はいったん紙を透過するので、ぼんやりとした、やわらかな印象を与える光になる。「紙の風合いを生かした、温かみがある照明」(説明員)である。

「slice of light」の事例その1
「slice of light」の事例その2

 特殊な紙の上には、イラストなどの絵が描かれており、LEDが消灯しているときでもポスター代わりになる。ブースでは、シャンデリアやランプなど、従来の照明を模したイラストにLEDの光が組み合わせた試作品を披露した。

「slice of light」の事例その3
「slice of light」の事例その3のLEDが消灯したところ。光が消えると普通のポスターに見える

 AgICの取締役で、慶応大学SDMの博士課程に在席している杉本雅明氏によれば、「来場者の反応はよく、例えばいくつかの海外のギャラリーが強い関心を持ってくれた」という。

 光を透過する特殊な紙は、紙の専門商社である竹尾が提供したものである。デザインに関しては、岡室健氏をはじめとするデザイナーチームの協力を得た。

「slice of light」を格納してきたケース。一般的なポスターケースと同じである