講演する長尾氏
講演する長尾氏
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 高齢者見守りサービスの主役を担うのは、運輸業者かもしれない――。そう感じさせる取り組みを、ヤマト運輸が進めている。個人宅への宅配サービスを活用した、独居高齢者の見守り支援だ。「圧倒的な訪問件数の多さを、高齢者の孤独死防止につなげる」。同社 代表取締役社長の長尾裕氏はこう狙いを語る。

 「第29回 日本医学会総会 2015 関西」の学術講演(2015年4月11~13日、国立京都国際会館など)では、「健康社会を支える医と産業の新しい連携 ~新医療時代の開花に向けて~」と題する特別企画が開催された。さまざまな分野の企業経営者が登壇し、「医」と「産業」の連携について語るセッションである。長尾氏は登壇者の1人として、運輸大手の取り組みを語った。

 「クロネコヤマト」の通称で知られる同社の宅配サービスはかねて、一般家庭から一般家庭への宅配サービス(C to C)を主力としてきた。今後は地方自治体や事業者から一般家庭への宅配サービス(B to C)にも比重を置く考えで、その一環として高齢者の見守りサービスに着目する。

地方自治体や事業者と連携

 同社は高齢者のケアを「見る」と「守る」に分けて捉えているという。「見る」は高齢者の生活状況に目を配り、異常がないかを確認すること。「守る」はもう一歩踏み込んで、身の回りの世話をしたりすることだ。このうち「ヤマトグループにできるのは、対面接点を生かした“見る”こと」だと長尾氏は話す。

 同社は月間1000万件近くの宅急便を扱っており、セールスドライバー数は8万人に及ぶ。全国津々浦々の家庭に荷物を届けるサービス形態を生かし、宅配時に高齢者の状況を確認。何日も不在が続くといった異常を発見した場合、地域の役場などに連絡し、民生委員などがその家庭を訪問する。こうした形で「独居や老々世帯の高齢者が安心して生活できるように、地方自治体や事業者と連携したサービスを提供する」(同氏)。