2020年には世界で500億のデバイスがインターネットでつながるIoT(Internet of Things)やビッグデータ、指数関数的に進化する言われる人工知能(AI)など、近未来の生活を激変させるICT技術は、医療の領域でも大きな変革をもたらすとされる。「第29回 日本医学会総会 2015 関西」(2015年4月11~13日、国立京都国際会館など)の学術講演で、帝京大学 医療情報システム研究センター教授の澤智博氏は、「医療とIT~近未来の医療はこう変わる~」と題したセッションに登壇。IoTとウエアラブル、人工知能などが医療に光をもたらす反面、ダークサイドが存在することを示し、議論を投げかけた。

講演する澤氏
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 澤氏はまず、現在の医療に関わる医療者・患者と環境、情報システムの関係を俯瞰した図を提示し、医療機関、生活環境、医学・ヘルスサイエンス、教育フレームワークの4つの領域の情報は必ずしもつながった状態ではないことを指摘した。これがウエアラブルをはじめとするデバイスどうしが人間を介さずにつながるようになると、それぞれでの領域での情報が膨大になるとともに共有化が進展する。情報がつながると、病院と生活環境の距離は縮まり医療とヘルスケアが一体化すると説明。

 「(情報のあり方は)どこから病院で、どこからが家かの境目がなくなり、どこで医療サービスを受けるかという議論も出てくる。また、(IoTにより収集・分析されたデータを基に)知識を持ち始めたロボットが家庭にも置かれ、健康管理のアドバイスや医療に準じた簡単な行為が提供されるようなことも可能になる。4つのエリアの中で離れた位置にあった患者さんや健常者の健康データも医学知識に吸収され、それぞれのエリアが近づくとともに知識もAIの領域に入ってくるだろう」(澤氏)。