動体ファントム(右)とターゲットカプセル(左)
動体ファントム(右)とターゲットカプセル(左)
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ターゲットカプセルは、呼吸に同期して動く肺がんを再現
ターゲットカプセルは、呼吸に同期して動く肺がんを再現
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 まるで、呼吸する人間の胸部――。「2015 国際医用画像総合展(ITEM 2015)」(2015年4月17~19日、パシフィコ横浜)で注目を集めた展示品の1つが、「マルチセル方式動体ファントム」だ。呼吸に伴う体表面や腫瘍の3次元的な動きを再現できる、放射線治療用の人体模型である。

 悪性腫瘍(がん)の放射線治療では最近、呼吸に伴う腫瘍の動きに同期し、腫瘍だけに高線量の放射線を照射する「呼吸同期照射」が用いられるようになってきた。今回のファントムは、そうした高精度放射線治療の模擬試行や評価に利用するもの。放射線治療支援技術を手掛けるアキュセラが開発したもので、2015年秋以降の発売を計画している。

患者ごとに動きをカスタマイズ

 このファントムはシリコーンゴム系材料で作製した胸部模型。肺や腹部を模した「セル」を内部に実装しており、ここにエアコンプレッサーで空気を送ると最大15mmほど胸部が拡張し、呼吸動作を再現する。肋骨も再現しており、胸部の拡張に合わせて変形するようにした。内部の空隙(体腔部)には人体組織の電子密度に近く、膨張可能な材料を充填している。

 呼吸に伴う胸部悪性腫瘍(肺がん)の3次元的な動きを模擬する「ターゲットカプセル」も開発。球状の模型で、線量フィルムを格納した上でセル内部に装着する。これによって、放射線治療の模擬試行時に、腫瘍に模したターゲットカプセルに放射線が計画通りに当たったどうかを確認できるという仕組みだ。

 患者ごとのカスタマイズも可能という徹底ぶり。呼吸周期や胸部拡張量、腫瘍移動軌跡などのパラメータを、個々の患者のX線CT撮影データを基に調整できるようにした。