東邦大学医学部臨床生理機能学教授の東丸貴信氏
東邦大学医学部臨床生理機能学教授の東丸貴信氏
[画像のクリックで拡大表示]

PWVの欠点を改善したCAVI

 頚動脈硬化の評価は、心臓脳血管イベントの予知に有用となる。例えば、プラーク(動脈内側に粥状の隆起)は頚動脈エコー検査で調べることができ、プラークの厚さである「IMT」(Intima Media Thickness)の増加は、脳卒中や心筋梗塞に関係する。ただし、冠動脈の高度狭窄が無くても、プラーク破裂などによる冠血栓形成により心臓血管イベントが発生することがある。脳領域でも、血管再建治療が必要な患者に占める高度頚動脈狭窄病変がある患者の頻度は少ないという。

 動脈硬化・血管弾性を評価する血管機能検査には、足首関節の最高血圧を上腕の最高血圧で割った「ABI(ankle brachial pressure index)」や、ABIに脈波伝播速度「PWV(pulse wave velocity)」を組み合わせる方法がある。PWVは「血管の長さ(身長から算出)」を「脈波伝播時間」で割って求める「1秒間に伝播する脈波の速度」であり、加齢などで動脈壁が肥厚・硬化して弾性度が低下すると速くなる。例えば、20代健常者のPWVが平均6.3m/秒なのに対して、70代健常者のPWVは平均10.0m/秒だという。

 ただし、PWVは測定結果のバラつきが大きいという欠点がある。血圧が高いと大きな値が出ることもある。これを改善した検査方法が「CAVI(cardio-ankle vascular index:心臓足首血管指数)」であり、カフを両上腕と両足首に巻いて15分ほどかけて測定する。CAVIには血圧に依存しないという利点もある。