ICEPのMEMS分野では、加速度センサーや圧力センサーといったデバイスが実用化して以降、企業による実用的なデバイスの発表は減少している。代わって数年前から、低温接合技術にかかわる発表が増加。今回は接合技術だけで1つのセッションを形成するまでになった。

 表面活性化接合に代表される、低温接合にかかわる研究の歴史は古い。ここ数年で達成された大きな進歩は、さらなる低エネルギー(低温、低加圧、大気中)化とアプリケーションの具体化、特にハーメチックシーリングへの応用である。今回も東京大学が、表面処理の工夫などによる完全な室温・超低加圧の技術を発表した。接合技術という意味では、ほぼ最終目標に達しつつある感がある。

 一方、蓋となる基板に枠状の構造体を形成し、それをMEMS基板に低温接合することで、ハーメチックシーリングを実現する技術が数年前から発表されるようになった。今回も産業技術総合研究所や早稲田大学が関連技術を発表した。

 MEMSデバイスの信頼性を確保し、さらにパッケージ状態での小型化を実現する上で、このアイデアは非常に有効だ。従来、MEMS周囲の雰囲気を不活性気体あるいは真空に保つには、大掛かりな装置と、セラミックや金属などの高価なパッケージが必要だった。結果としてデバイスの小型・低コスト化をはばんでいた側面がある。この技術はそれを改善するものとして将来に向けて大きな期待が持てる。