講演する宮本氏
講演する宮本氏
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 国立循環器病研究センター(国循) 予防医学・疫学情報部長の宮本恵宏氏は、「医療ビッグデータ・サミット2015」(2015年3月23日、主催:日経デジタルヘルス)に登壇し、「循環器疾患の予防・制圧に向けた生活習慣のビックデータ解析と介入方法の開発」と題して講演した。

 同氏がまず示したのは、急性心筋梗塞による年齢調整死亡率のグラフ。心筋梗塞による死亡率が減り、循環器疾患の克服が順調に進んでいるように見えるが、高齢化が進む中で「実際の死亡率は横ばい」。次に、国循の急性心筋梗塞の院内死亡率年次推移と、宮城県の急性心筋梗塞の登録データを示した。いずれも死亡率は減っているが、年間入院数は減っておらず、救急搬送はむしろ増えている。

 なぜこのような状況になっているのか。そもそも心筋梗塞は、心臓の筋肉の一部が壊死する疾患。心不全や心破裂、致死性の不整脈によって死に至るが「薬剤や治療の発達によってこれらは抑えられるようになってきた」。一方で、心筋梗塞の要因となる動脈硬化症を引き起こす、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病への対策は十分に行われていないという。「何が要因でどういったインパクトを持っているのかに関する研究が不十分だ」。

 循環器疾患は、健康寿命を短くする要因にもなる。日本人男性の平均寿命が79.55歳なのに対し、健康寿命は70.42歳。日本人女性は平均寿命が86.30歳なのに対し、健康寿命は73.62歳。女性の方が男性よりも健康寿命と平均寿命の差が大きい点を指摘し、この差を埋める上では「循環器疾患への対策が必要」とした。