講演する武田氏
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 日本IBM 東京基礎研究所 技術理事の武田浩一氏は、「医療ビッグデータ・サミット2015」(2015年3月23日、主催:日経デジタルヘルス)に登壇。同社の質問応答システム「IBM Watson」(以下、Watson)を利用した、医療分野での診断支援の実例を紹介した。

 武田氏はまず、Watsonの仕組みを紹介した。キーワードは、コグニティブ・コンピューティングとマシンラーニング(機械学習)。従来、コンピューターが応答するには、質問に対してあらかじめ回答を用意しておく必要があった。それに対し、Watsonはデータベースから回答の候補を探し、それらに重み付けをするというアプローチによって、新しい質問にも対応できるようになった。コグニティブ・コンピューティングの精度を高める上で、マシンラーニングを利用する。過去の事例を、重み付けの判断材料として学習させるわけだ。

 開発上の達成目標の1つとなったのが、米国のクイズ番組「Jeopardy!」で勝つこと。実際、Watsonは2011年に、2人のチャンピオンと競って勝利した。このクイズ番組では同じ質問は二度と出題されないため、質問と回答のデータベースを記憶させておく方法では対応できない。Watsonは初出の問題に対し、いくつかの段階に分けて回答を導く。

 まず、求められている答えの種類がどういったものか(地名、人名など)を解析する。その後、問題文に含まれるキーワードから得られた候補によって、いくつかの仮説を作成。膨大なデータベースを照合してその「確信度」を算出する。確信度が50%を超えた時点で回答する。

 同社は、過去に使われた問題をWatsonに回答させ、確信度の算出にその正誤を反映させるという形でWatsonを鍛えた。この結果、Jeopardy!の本番では、チャンピオンたちとほぼ同じ88%という高い正答率を残せた。