GoNETのアクセスポイント製品。左下が現在主流の「GoBeam8000」。右下が屋内用の「GoBeam3000」、右上が屋外用の「GoBeam7000」。左上は5GHzだけに対応した新製品の「GoBeam9000」
GoNETのアクセスポイント製品。左下が現在主流の「GoBeam8000」。右下が屋内用の「GoBeam3000」、右上が屋外用の「GoBeam7000」。左上は5GHzだけに対応した新製品の「GoBeam9000」
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移動通信の基地局アンテナの隣に付けられているGoNET製品
移動通信の基地局アンテナの隣に付けられているGoNET製品
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GoNET社製品のシステムの説明図
GoNET社製品のシステムの説明図
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 日本国内の様々なサービスでその製品が利用されていながら、名前を知られていないイスラエル企業は多い。記者が「Mobile World Congress 2015」(2015年3月2~5日、スペイン・バルセロナ)で話を聞いたGoNET Systems社もそんな1社だ。同社は大規模ネットワーク向けの無線LANアクセスポイントを開発するメーカー。その性能の高さから、2011年以降、日本国内の複数の通信事業者が提供する公衆無線LANサービスでは主力機器として採用されているという。例えば、ある通信事業者が、屋外用に設置している広域用無線LANアクセスポイントのほぼ100%が同社製だという。

 同社の製品の強みは、汎用の無線LAN用ICに独自のビームフォーミング技術を組み合わせている点にある。汎用の無線LAN用ICをそのまま使用した通常のアクセスポイントの場合は、ビームパターンが数種類しか用意できず、しかも各パターンのビームはあまり絞っていないため、アンテナ利得は3dBi程度と小さい。一方、GoNET社は約500のビームパターンを用意し、各ビーム幅を24~30度程度に絞るため、アンテナ利得が14dBiと高い。

 多様なビームパターンは、複数のアンテナに対して位相の異なる信号を入力することで実現する。いわゆるフェーズドアレーアンテナである。ここにも工夫があるという。一般のフェーズドアレーアンテナでは、アンテナの手前に位相器を付け、ここで位相をずらす処理をする手法が採られる。この場合、位相器とパワーアンプが多数必要になることに加え、位相を制御するために大量の計算が必要になるため、安価に実現するのが難しく、サイズも大きくなる。