SCEの吉田氏
SCEの吉田氏
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 据置型ゲーム機「プレイステーション(PS)4」向けVR(仮想現実感)用HMD「Project Morpheus(プロジェクトモーフィアス)」で、新型試作機を発表したソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)。発売時期は2016年前半と発表し、製品化に向けていよいよ動き始めた。新型試作機の改良点やビジネス戦略にむけて、ゲーム開発のキーパーソンであるWorldwide Studios プレジデントの吉田修平氏に話を聞いた。(聞き手は小野憲史=ゲームジャーナリスト)

--新型試作機ではコンテンツ体験が向上していて驚いた。深海をゴンドラで観光する「The Deep」のデモで、旧バージョンでは「VR酔い」的な不快感を覚えることもあったが、新バージョンでは感じられなかった。

吉田氏 そこはまさに今回の狙いだった。Morpheusを昨年発表したとき、商品版ではないと言い続けてきた理由もそこにあった。従来試作機でもコンテンツの作り方次第では快適なVR体験を得られた。しかし、より多くの人に楽しんでもらうためには、さまざまな改良が必要だと感じていた。ここにきてやっと、発売時期を発表できるほどの水準に達することができた。

--最大の特徴はフレームレートが60フレーム/秒から120フレーム/秒に高まったことだと思うが、これは当初から計画されていたのか。

吉田氏 そのとおりだ。表示部を液晶パネルから有機EL(OLED)パネルに変えたことで実現できた。有機ELパネルだと遅延時間が短く、その発光時間を調整することで映像の「残像感」や「ブレ」を抑制しやすいからだ。120フレーム/秒も少し時間がかかったが、ここにきて実現できた。特にPS4は1080pで60フレーム/秒のゲーム開発に最適化されており、「リプロジェクション(再投影)」で120フレーム/秒に高めやすい。もちろんVR専用でコンテンツを開発してもらえれば、120フレーム/秒にネイティブ対応できる。

--つまり既存のゲームと同じ作り方で、Morpheus対応といったオプションも用意できるということか?

吉田氏 そのとおりで、ゲームデザインの面から、そのまま対応できるものは少ないと思うが、レースゲームなどは比較的対応させやすいジャンルだ。また最近のゲームは非常に精緻なグラフィックで世界が構築されているものが多い。そのためゲーム本編とは別に、Morpheusを使えば世界の中に入り込む体験ができる、などのモードも考えられるだろう。ゲームの中に最初から組み込まなくても、ダウンロードコンテンツ(DLC)で後から配信することもできる。