「まさに『Project Ara』のようなモジュール型スマートフォンに適した技術だ」――。電磁界結合を応用した非接触通信技術の研究開発に取り組む慶応義塾大学 理工学部電子工学科 教授の黒田忠広氏は胸を張る。同氏らの研究チームは、「Two-Fold Transmission Line Coupler(T-TLC)」と呼ぶ非接触通信技術を開発し、「2015 IEEE international Solid-State Circuits Conference(ISSCC 2015)」」で発表する(講演番号:10.3)。特徴は、非接触通信を実施するのに必要な結合器の大きさが6mm2と小さく、電磁雑音面で実用水準を確保したこと(図1)。これにより、例えば米Google社のモジュール型スマートフォン開発プロジェクトProject Araにおいて、モジュール間の非接触通信に適用できるとみている。

 Project Araでは現在、モジュール間の非接触通信には、コイル(インダクター)を利用した磁界結合で、1チャネル当たり5.8Gビット/秒を実現する予定だ。これに対して黒田氏は、「私自身、以前磁界結合で非接触通信の研究に取り組んだ。しかし、6Gビット/秒前後という高速な通信に磁界結合方式を適用するのは難しいと思う」と語る。

図1 フレキシブル基板上に形成したT-TLCの結合器