腕章型フレキシブル体温計の概要と装着イメージ
腕章型フレキシブル体温計の概要と装着イメージ
[画像のクリックで拡大表示]

 科学技術振興機構(JST)は、JST戦略的創造研究推進事業において、東京大学の研究グループが有機集積回路を用いた「腕章型フレキシブル体温計」を開発したと発表した。東京大学 教授の桜井貴康氏、同 教授の染谷隆夫氏らによる研究プロジェクト「染谷生体調和エレクトロニクスプロジェクト」の成果である。

 今回の腕章型フレキシブル体温計は、有機集積回路や温度センサー、室内光で発電する太陽電池、ピエゾ・フィルム・スピーカーで構成され、「装着感の少ない柔らかさ」「ケーブルが不要なワイヤレス構造」「電池交換などのメンテナンスが不要」といった特長を持つ。人の上腕部に取り付けて体温を常時モニタリングし、設定した体温を超えると音で知らせる機能を備える。

 発熱を検知するセンサーとして、柔らかな高分子フィルム上に形成できる抵抗変化型の温度センサーを新たに開発。発熱と判断する体温は、36.5~38.5度で自由に調節できる。また、ブザーを鳴らすための回路には有機トランジスター、音を発生させるスピーカー部分にはピエゾフィルムをそれぞれ採用。ブザー音の周波数は、3~6kHzに設定されている。

 さらに、明るい部屋では電圧が高すぎて回路を破壊してしまう太陽電池の特性に配慮し、部屋の明るさに応じて電圧を調整できる有機電源回路も新たに開発。回路がない場合と比較して、7.3倍明るい部屋でも利用できるとしている。そのほか、市販のアモルファスシリコンを用いたフレキシブルな太陽電池と、ポリフッ化ビニリデンを用いた圧電フィルムのスピーカーを使用する。

 今後は、水分や圧力など温度以外のさまざまなセンサーへの応用を想定。体温情報や多点での測定結果の送信、蓄電による夜間動作などへの展開も期待される。今回の研究成果は、2015年2月22~26日に米国サンフランシスコで開催される「国際固体回路会議(ISSCC)2015」で発表する。