「規模の経済から選択肢の経済へ」――。

 この流れの重要性を指摘するのは、米Illinois Institute of Technologyでデザインやイノベーションについて研究するPatrick Whitney教授だ。

 大量につくり、大量に消費する規模の経済。その時代は終焉を迎え、消費者が選ぶ経済へと移行した。つまり、「生産者から消費者にパワーが移った」(同教授)というわけだ。インターネットの普及によって、主導権を持つ消費者の知識が増える中、重視すべきは「何をつくるか」。多くの人々は、それを認識している。だが、ことビジネスになると、なかなか過去を捨てて舵を切ることはできない。

 この変化の節目にある大きな分野が一つある。それは、電力を中心としたエネルギー分野だ。2015年2月2日に沖縄科学技術大学院大学(OIST、沖縄県恩納村)で開幕した「第2回オープンエネルギーシステム国際シンポジウム」(会期は同3日まで)では、消費者が主役となる時代の電力システムの技術やビジネスモデルなどについて国内外の有識者による発表が相次いだ。Whitney教授は、発表者の1人だ。

シンポジウムが開催されたOIST
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ボトムアップ型が、「これから電化」のプロセス

 これまでの電力システムは、一握りの電力会社が一括して発電・配電し、消費者にあまねく電力を供給することが当たり前。消費者が主導する時代には、このトップダウン型のシステムがボトムアップ型に変わる。カギは、太陽光パネルなどの再生可能エネルギーや蓄電池、直流給電を組み合わせた分散型エネルギーシステムと、不特定多数のプレーヤーによる発電・配電の仕組みである。

 シンポジウムを主催するOISTの教授で、ソニーコンピューターサイエンス研究所(ソニーCSL)の社長を務める北野宏明氏は「オープンなエネルギーシステムが、未来のシステム。エネルギーアクセスは新しい時代を迎えた」と指摘する。

シンポジウムの様子
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 特に注目を集めるのは、東南アジアやアフリカといった途上国のエネルギーシステムだ。これから「電化」が本格化する途上国の農村部などでは、先進国とは異なるプロセスで電力が普及するとの見方は強い。

 北野氏は、それを担う仕組みがオープンなエネルギーシステムだと見る。「例えば、まだ電気がきていないカンボジアの村。そこで3時間でも電気が使えたら、生活者の人生が大きく変わる」(同氏)。