今回のIEDMでは、最先端メモリーの微細化・大容量化技術と新しいアプリケーション探索の発表が相次いだ。その背景には、メモリー寸法・性能の単純な向上である「スケールアップ」の限界が近づく一方で、システム全体で性能向上を図る「スケールアウト」を意識した開発が、半導体業界全体で継続的に行われていることがある。サーバーなどのハイエンド仕様とASICなどの低電力仕様の両方を満たすデバイス開発を目指して新技術を導入し、その結果として微細化・大容量化が達成されている。

 今回の学会では、揮発性メモリーのSRAMや混載DRAMの微細化が、新技術の導入によって1Xnm世代へ継続する見通しが得られた。不揮発性メモリーの3次元NANDフラッシュメモリーや抵抗変化型メモリー(ReRAM、MRAM、PCM)においても、さらなる大容量化や新アプリ探求の挑戦が継続されている。背景には、ビッグデータを取り扱うデータセンターの不揮発性メモリー化やIoT社会実現の要請がある。以下では、最先端メモリー開発の動向を象徴する論文を、不揮発性メモリーについて4本、揮発性メモリーについて2本、紹介する。

「V-NAND」の信頼性について発表

 不揮発性メモリーに関しては、韓国Samsung Electronics社が、3次元構造のNANDフラッシュメモリー「V-NAND」の信頼性に関して発表した(論文番号14.5:A New Approach for Trap Analysis of Vertical NAND Flash Cell using RTN Characteristics、図1)。

図1●Samsung社のV-NANDのシミュレーション結果(IEDM 2014)
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 V-NANDのメモリーセルトランジスタは、基板に垂直に形成したSOI構造を取る。この論文では、SOIのチャネル、およびバックゲート材料の多結晶Siとback-oxideに生じる不具合を解析している。2次元構造NANDの開発を通じて構築したRTN(random telegraph noise)法を、V-NAND向けに改良。back-oxide内の欠陥を評価した。

 本発表では、back-oxideの成膜プロセスの良否を判断している。V-NAND固有の課題といえる計測手法の一つが確立されたことで、テラビット級メモリーの実用化がまた一歩近づいたといえるだろう。