長田病院リハビリテーション室室長の佐治周平氏
長田病院リハビリテーション室室長の佐治周平氏
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 2014年10月29~31日に開催された「次世代ヘルスケア展」(主催:日経BP社、協力:日経デジタルヘルス)で、「HAL/NESS導入による慢性期リハビリの展望について」と題し、神奈川県横浜市の長田病院リハビリテーション室室長 佐治周平氏が、介護用ロボットを利用した運動機能回復訓練における成果、介護現場が機器に求める機能などについて講演した。

 同病院は2012年7月より神奈川県介護ロボット普及推進委員会と協力して、CYBERDYNEの「ロボットスーツHAL福祉用」とフランスベッドの「フットドロップシステムNESS L300」「ハンドリハビリテーションシステムNESS H200」を使った実証実験を行っている。講演では、それらの介護ロボットをくも膜下出血の後遺症で両下肢不全麻痺の患者や頚椎症性脊髄症で歩行障害に陥った患者などの運動訓練に適用し、その有効性を説明した。

 まず、2004年にくも膜下出血となり、後遺症として両下肢不全麻痺の患者の例では、歩行の安定強化も目標にHALを利用した立ち上がり訓練や歩行訓練を紹介。介護ロボットを利用するにあたり重要な点を佐治氏は、「必ずセラピストとのやり取りの下に動作を学習してもらうことが重要。特にリハビリを受けなくなって時間が経過した患者さんは、自己流の動きや歩き方が身についたり、使わない動作が多かったりする。その動きや動作をもう一度学習してもらう必要があり、セラピストの指導が随時必要だ」と指摘した。

 初期実施後の評価としては、体幹の緊張のアップ、曲がらなかった左膝関節の屈曲出現、通常時の歩行安定性向上などが見られたという。「特に大きな成果は、もう歩くことは不可能と思い込んでいた本人が、主観的に歩けるような気になったと言い、モチベーションが大幅に向上したことだ」(佐治氏)と強調した。HAL使用時には、立ち上がり動作のスピードアップ、歩行でのバランスアップ、歩行時の麻痺側の進展性向上、荷重時間の増加などが顕著になった。また、装具なしでの平行棒を使った歩行、サポーターによる歩行が可能になったという。