森川氏の講演の様子
森川氏の講演の様子
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 オリックス・リビング 代表取締役社長の森川悦明氏は、「次世代ヘルスケア展」(主催:日経BP社、協力:日経デジタルヘルス、2014年10月29~31日)のカンファレンスに登壇。「テクノロジーがもたらす介護サービスの将来」と題して講演した。同社が運営する有料老人ホーム「グッドタイム リビング」の事例を通じて同氏が訴えたのは、最先端のテクノロジーを積極的に採り入れることが、介護者と被介護者の双方の心身にプラスの影響を与えるということだ。

 オリックス・リビングが注力する介護のイノベーションには、(1)“持ち上げない”介護の実践、(2)転倒など不慮の事故の解消、の大きく二つがある。これらを通じ、老人ホーム入居者に「安心につつまれた暮らしを提供するとともに、メンタルが疲弊しがちな介護職員のストレスも軽減し、65歳まで介護現場で働くことを可能にする」(森川氏)ことを目指してきた。

 (1)については、高齢者の移乗に使う介護リフトを2011年に試験導入した。この際、現場の猛反発にあったという。介護職員は「いかに高齢者を安全に持ち上げることができるかのスキルを必死に学ばされる存在」(森川氏)だからだ。だが実際に導入してみると、従来は最も辛い作業と認識されていた移乗介助を、ほとんどの職員が苦痛と感じなくなった。入居者も、移乗時の身体の緊張から解放され、笑顔になることが増えたという。

 こうした効用から、2013年春にはグッドタイム リビングの全施設に介護リフトを導入。それでも「現場の反応にはまだ濃淡がある」(森川氏)とし、介護現場にテクノロジーを採り入れることの難しさを吐露した。現在の介護リフトには移乗速度が遅いなどの課題があることから、トヨタ自動車と共同で、抱きかかえロボットの開発を進めているという。