ミックストシグナルICの増加を受けてか、米ワシントン州シアトルで開催の「ITC(International Test Conference)2014」(2014年10月19日~24日)では、アナログ回路やRF回路、電源回路のテスト技術で複数の興味深い発表があった。それぞれで、1~2件ずつを以下に紹介する。

 アナログ回路テストでは、ベルギーKatholieke Universiteit Leuven教授のG. Gielen氏のグループと米ON Semiconductor社との共同発表が目を引いた。講演タイトルは「Design and Test Analog Circuits Towards Sub-PPM Level」(講演番号19.3)だった。車載ICでは、チップの欠陥・故障率を1ppm以下に抑える要求がある。ミックストシグナル(アナログ・デジタル混載)ICの場合、その欠陥・故障の80%はアナログ部にあると言われている。

 一般に、アナログ回路に対しては、その回路が機能しているか、性能が仕様内に入っているか、という機能・仕様ベースのテストが行われる。しかし、例えばチップ内のバイパスコンデンサの一方の電極がオープンになっている等の故障は、このテストでは見つけることができない。これが車載ICのテストにおける大きな課題である。

 そのような故障に対しては、欠陥ベースのアナログ回路のテスト技術が有力な手法と考えられる。ただし、この欠陥ベースのアナログ回路のテスト技術は20年も前から研究されているが(実現が夢と言われている)、これまで十分な成果が上がっているとはいえない状況だ。今回の講演では、産業界での強い要求を受けて、テスト界全体で車載用ICのテストにチャレンジしているという印象を受けた。

 Gielen氏のグループと米ON Semiconductor社は、1996年のITCでOlbrich氏が提案した1トランジスタあたり6個の故障モデル、容量Cは一方の端子がオープンの故障モデル等を用いて故障検出率を計算した。パワーオンリセット回路、レギュレーター回路、バンドギャプ参照回路に適用して有効性を確認したと主張している。が、講演を聴いた範囲ではどこまで実用レベルになっているかの判断は難しいと思った。

 いずれにせよ、このようにベルギーのKatholieke Universiteit Leuvenや研究機関のIMECは産業界の要求にぴったりと合った研究に早めに本格的に着手していると実感した。