A-D変換器は、ミッストシグナルSoCのキーコンポーネントであり、単体ICとしても重要である。そのテスト技術の研究開発はすでに何十年も続けられてきたが、現在も新しい成果が続々と生まれている。

 米国ワシントン州シアトルで開催の「ITC(International Test Conference)2014」(2014年10月19日~24日)でも、A-D変換器のテスト技術に関して新たなアイデアが発表された。以下にそのうちの2件を紹介する。

 1件目は、米Iowa州立大学 教授のD. Chen氏がセッション27(Stay "Tuned" for Analog Testing)で発表した、A-D変換器の線形性と周波数特性を同時に高速テストする技術である。講演タイトルは、「Fast Co-test of Linearity and Spectral Performance with Noncoherent Sampled and Amplitude-Clipped Data」(講演番号27.3)。入力範囲を越える振幅の正弦波を与え、線形性と周波数特性を同時にテストする手法を提案した。

 A-D変換器の出力はクリッピング(飽和)してしまうが、新しく開発したカーブ・フィッテング・アルゴリズムで基本波成分を推定し、残差から歪みやノイズ成分の情報を得る。テスト時に入力正弦波とサンプリングクロックが同期している必要はない(インコヒーレントサンプリングでよい)。また正弦波の周波数と振幅を正確に制御する必要はない。このため、低コストのA-D変換評価システムでも短時間でテストが可能になる。

 登壇したChen氏が昨年のITC 2013で発表したA-D変換器のテスト技術の論文は、今回のITC 2014で最優秀論文賞に選出された。Iowa州立大学には、この分野で著名なもう1人の研究者がいる。教授のR. L. Gieger氏である。両氏は、A-D変換器のテスト分野では世界でトップとの声も聞こえる。産業界とも密接に交流しているようである。両教授ともA-D変換器のテストだけでなくA-D変換器の設計でも研究成果をあげている。特にA-D変換器の自己校正技術ではパイオニア的な仕事をした。