Samsung社ブース。かつてのphotokinaでは来場者がまばらなときもあったが、今回はNX1を大量展示したこともあってか、人が多くなっていた。
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未発表の大型レンズ(300mm F2.8)を、NX1に付けた状態で試用できた。
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 韓国Samsung Electronics社は、展示会「photokina」において同社最上位となるミラーレス機「NX1」を少なくとも70台用意し、来場者が自由に操作できるようにした(NX1に関する記事)。この台数の多さは異例であり、同社が製品の仕上がりに並々ならぬ自信を持つことが伺える。同社はAPS-C型撮像素子を用いた高級一眼レフ機を乗り越えることを目標に開発を進めた。

 そればかりではない。Samsung社は、カメラの次の有望な進化軸をつくり出そうとしている。その一つがNX1において連写に頼らないオートシャッター機能を備えたことだ(オートシャッターに関する記事1同2)。ブースにおける質疑応答を以下に記す。同社はNX1の想定実売価格を公表していないが、2000米ドルをやや超える水準とみられる。

映画やCMの撮影に向けて周辺装置をNX1に装着した例。業務用動画撮影では日本企業のレンズ交換機が広く用いられているが、Samsung社もこの分野を徐々に攻めたいと考えている。
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指掛かりの良さを徹底追求してNX1のグリップを設計したいう。右手小指が行き場に困ることもない。
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NX1について

Samsung Auto Shotを使うと、バッティングとジャンプを容易に撮れる。後者は空中で被写体の加速度が最も低くなった瞬間を撮影する。
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レーザービームと背景写真を用いた簡易デモ。
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Samsung Auto Shotでプロ野球選手を撮影した結果。
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――「Samsung Auto Shot」によって、バッターがボールを捉えた瞬間を撮影できる。対応する球速は?

A:80~160km/hだ。最低速度の引き下げも検討している。さほど難しくない調整で実現できるだろう。

――Samsung Auto Shotをなぜ実装したのか。

A:カメラを“民主化”するためだ。既存のカメラには、職人芸を要する撮影シーンが幾つもある。ユーザーには長年の修練を積まずに、心に響く瞬間を捉えてもらいたい。デジタルカメラがこれだけ売れなくなった原因を、我々はスマートフォンだけには求めない。デジタルカメラの進化が乏しいこと、すなわち我々カメラメーカーが撮影領域を拡大できていなかったことも原因だ。後発の我々にとって15コマ/秒の連写速度、205の測距点といった改善の実現は、もちろん重要だった。しかし、それだけにとどまっては市場を活性化できない。

――水鳥が魚をついばむ瞬間を撮りたいユーザーは、法外ともいえる費用を掛けて機材を準備し、丸一日粘ってどうにか撮影することが少なくない。オートシャッター機能を拡張すれば、こうしたシーンを簡単に撮れるのではないか。そして、そのソフトウエアを数万円で売り出せば、カメラ本体と共に喜んで買う人は少なくないはずだ。

A:ソフトウエアの別売り計画は今のところない。オートシャッター機能は拡張していく。カメラや写真はまだまだ面白くなる。

――Samsung Auto Shotで機械式シャッターは1回しか動作していない。電子シャッターによるプリ連写(ユーザーがシャッターボタンを押す前の連写)もしていないのか。

ASIC「DRIMe V」
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メーンボード(撮像素子側)
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メーンボード(液晶モニター型)。なおグリップ内部には、ルビコン製のアルミ電解コンデンサー(330V品)が収められていた。
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A:NX1はプリ連写をしていない。15コマ/秒で撮影してもバッターとボールを一緒に撮れる写真は、1打席で2~3枚しか得られない。その中でバットがボールに当たった瞬間を捉えられる確率は決して高くない。だから球速を検出することにした。

――球速は大きく変わる。しかもそれ以外の被写体や撮影シーンの認識も欠かせないだろう。専用回路が要りそうだ。

A:そうだ。ASIC「DRIMe V」内にオートシャッターに向けた回路ブロックを設けた。

――ということは、2年以上前からバッティング撮影を盛り込む予定だったのか。ASIC設計は一般にそのくらいの時間を要する。

A:違う。バッティング撮影機能の盛り込みは1年ほど前に決めた。あるエンジニアが素晴らしいアルゴリズムを考え出してくれたからだ。それを受けてDRIMe Vの回路設計を変更した。

――DRIMe Vに富士通セミコンダクターは関与しているか。高級コンパクトカメラでSamsung社は、富士通セミコンダクターのSoCを用いていた。

A:ミラーレス機のNXシリーズのSoCは、一貫して自社設計・製造。撮像素子も同様だ。