「パソコンは最初の製品が1970年代に登場してから産業として確立するまで、10年ほど掛かりました。パーソナルロボットも5年か10年ぐらい掛かると思っていましたが、(ソフトバンク代表取締役社長の)孫に市場を2年で立ち上げろと言われて、いま必死で自転車をこいでいるところです」。2014年8月29日に開催された「国際ロボットカンファレンス2014」(主催:日経エレクトロニクス/組込みシステム技術協会)に登壇したソフトバンクロボティクス Pepperプロジェクト開発リーダーの林要氏は、今年6月に発表したパーソナルロボット「Pepper」の特徴とともに、ロボット市場の見通しについて講演した。

 Pepperは同年8月23日の時点で、4都道府県38店舗のソフトバンクショップに来客を楽しませる“クルー”として配属されている。今後は量販店、併売店を除く全国のソフトバンクショップに引き続き展開するほか、2015年2月に19万8000円(税別)で一般向けにも発売する。「正直、全く儲からない」(林氏)という戦略的な価格設定だ。

 林氏はPepperの特徴として、4つの特徴を挙げる。第1は「人型であり、人が気持ちを込めて会話をしやすいこと」、第2は「相手の感情を認識してフィードバックできること」、第3は「クラウドと大規模展開によって収集したビッグデータの活用」、第4が「クリエーターなどによるアプリ開発体制」である。

 Pepperのような人型ロボットには「人と同じような動きをすることで人の生活に溶け込みやすい」という運動機能上のメリットに加えて、人が話しかけやすいという対人関係上のメリットがある。「Pepperは人と目を合わせ、ボディランゲージをしながら話しかける。すると、人が会話に入り込んで本音を話してくれるようになる」(林氏)。

 Pepperは人の働きを代替するものではない。「人とコミュニケーションを取る」ために数多くの技術をつぎ込んだ。例えば、5本の指をワイヤーで連動させて微妙にずらしながら動かす構造については、会話中に自然なボディランゲージを取れるように調整した。ボディー前面にはタッチパネル方式のディスプレーも搭載する。「現在の技術では発話も聞き取りも限界がある。ショップの店頭にロボットを配置することを考えて、やせ我慢せずにディスプレーでコミュニケーションを補助するようにした」(林氏)。

 脚部は2足歩行ではなく「オムニホイール」というボール型の車輪を採用する。これで全体の安定性が高まったうえ、ボディ下部に最長12時間駆動の大型バッテリーを搭載できるようになった。

ソフトバンクロボティクス Pepperプロジェクト開発リーダーの林要氏
ソフトバンクロボティクス Pepperプロジェクト開発リーダーの林要氏