講演するBaron氏。このバイタルチェックシステムは、海外ではすでに販売が始まっているという
講演するBaron氏。このバイタルチェックシステムは、海外ではすでに販売が始まっているという
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シースターのブースにも展示。一般的なユーザーには全末梢血管抵抗などは理解しづらいと考えられるため、端末画面に情報をどう表示するかは市場に合わせて検討していくという
シースターのブースにも展示。一般的なユーザーには全末梢血管抵抗などは理解しづらいと考えられるため、端末画面に情報をどう表示するかは市場に合わせて検討していくという
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 「国際モダンホスピタルショウ2014」(2014年7月16~18日、東京ビッグサイト)では、「世界初!指先ひとつで測定できるバイタルチェック」と題し、医療機器の開発・販売を手掛けるシースター(東京都港区)による出展者プレゼンテーションセミナーが実施された。そこでは、同社が日本市場への投入を検討しているという、パルスオキシメーターを使ったバイタルチェックシステムが紹介された。講演したのは、同システムの開発に携わった医学博士のEhud Baron氏である。

 同システムは、指先などに装着したパルスオキシメーターで脈波を検出し、そのデータをBluetooth経由でスマートフォンやタブレット端末に送信。端末にインストールしたアプリケーションでデータを解析・保存する。パルスオキシメーターで検出した脈拍と血中酸素飽和度(SpO2)に加え、各種の指標を推定できるのが特徴だ。具体的には、血圧や心拍出量、全末梢血管抵抗などもリアルタイムに確認できると説明する。

 Baron氏は、病院で安静にした状態でのみ計測するのではなく、階段を上がるなどの日常生活中のバイタルチェックを可能にするため、このシステムを開発したという。例えば、同じ血圧でも心拍出量が低く全末梢血管抵抗が高い場合は、健康上問題があると分かるなど、複数指標を一覧できることによるメリットを強調した。

 Baron氏は、市場が広がりつつある活動量計と比較して、活動量計では測りにくい活動も計測できるのが利点だと説明。例えば、座ったまま筋力トレーニングをしたり、1カ所に立ったまま壁を押したり、といった活動量計がとらえにくい活動による各種指標の変化もこのシステムでは計測できるとした。

 Baron氏がこうした装置を開発したとき、医療関係者の反応は「こんな指先の装置一つで血圧が測れるはずがない」と懐疑的だったという。Baron氏は、パルスオキシメーターの波形をもとに推定算出する各種データの精度は信頼に足るものだと説明する。例えば、心臓超音波検査で計測した心拍出量と比較した実験では、誤差が±0.6L/分だったという。「医療機関にある大型で正確な装置に取って代わろうというものではないが、生活中のバイタルチェックという用途には非常に有用だ」(Baron氏)。

 メタボリックシンドロームの患者が重大疾患にかかるのを予防するといった使い方の他、健常者の健康管理などの用途も想定している。脂っこい食事や飲酒、喫煙などの後に数値が変化するのを見られるため、生活習慣の改善などに役立つとする。「私は医師だが、病院は行かずに済めばそれに越したことはない。こうしたシステムを通じて、健康管理の知識が広まればと考えている。運動にしても、1日の大半を安静にして2時間だけ激しい運動をするより、20分ごとに立ち上がって軽く歩き回るなど、運動の頻度を上げたほうが健康維持には効果的だということを、このシステムは教えてくれる」(Baron氏)。