講演する寺島氏
講演する寺島氏
[画像のクリックで拡大表示]

 「国際モダンホスピタルショウ2014」(2014年7月16~18日、東京ビッグサイト)では、「新しい専門ドックとしての心臓MRIドック」と題し、東芝メディカルシステムズによる出展者プレゼンテーションセミナーが実施された。そこでアピールされたのは、MRIを使った心臓ドックの有用性である。

 講演したのは、心臓画像クリニック飯田橋(CVIC)の院長である寺島正浩氏。CVICは心臓の画像診断に特化しており、開業医や病院からの依頼に基づいてX線CT装置やMRIで患者の心臓を撮影し、画像解析を行っている。

 X線CT装置やMRIを使った心臓ドックの目的は、いわゆる突然死のリスクを発見することだ。突然死の原因の74%は、心室細動や虚血性心疾患(心筋梗塞)など心臓に関するもの。こうした重大な心臓病は動脈硬化が引き起こしている。画像診断では、心電図やレントゲンでは分からない動脈硬化の進み具合(冠動脈の狭窄状況)を把握できる。動脈硬化は自覚症状を伴わないため、発見には、無症状でも画像診断を受けることが大切だと寺島氏は説明する。

 日本では近年、X線CT装置による心臓の画像診断が急増している。また、カテーテル検査も、X線CTで異常が見つかった場合の最終診断に用いられるため、増加傾向にある。MRIによる診断も伸びてはいるが、絶対数は年間3万件程度とまだ少ない。しかし、寺島氏は、心臓ドックに限れば、X線CT装置よりもMRIが適しているという。

 寺島氏は、X線CT装置での検査には2つの問題があると指摘した。1つは被曝の問題。ただし、医療機器メーカー各社の努力によりCT検査による被曝量は低減している。もう1つはヨード造影剤を使わなければいけないこと。造影剤は腎臓に対して毒性がある上に、非常に低い確率ではあるがアレルギー反応を起こすこともあるという。「病気が疑わしい人は別として、無症状での健診として行うにはリスクがやや高いのではないか」(寺島氏)。

 一方、MRIは、時間がかかるという欠点はあるものの、利点も多い。心臓のさまざまな角度の断面や心筋のダメージ、血流などを見ることができ、X線CT装置と違って被曝がなく、造影剤を使わない。精度は、病気があることを言い当てる確率が8割強、病気がないことを言い当てる確率が9割程度とした。

 X線CT装置やMRIを使った心臓ドックの効用として、突然死のリスクを見つける以外に、寺島氏は患者の意識の向上を挙げた。冠動脈の石灰化スコアなど、具体的な数字や画像を見ることで、健康維持や治療へのモチベーションが大きく高まるという。