HYDRO AGと従来のAg抗菌コートの違い
HYDRO AGと従来のAg抗菌コートの違い
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 富士フイルムは、従来の銀(Ag)系抗菌剤を使った抗菌コートと比べて、約100倍の抗菌性能を持つ抗菌コート技術「HYDRO AG」を開発した(ニュースリリース)。医療機関や公共施設、教育機関などに導入されるタッチパネル搭載機器向けの抗菌液晶保護フィルムとしての利用を想定している。

 HYDRO AGは、Agイオンを徐々に放出する機能を持ったセラミック微粒子(Ag系抗菌剤)を分散した超親水性の樹脂を塗布する技術。写真フィルムの開発で培ったAgに関する知見と精密塗布の技術、グループ企業である富山化学工業(本社東京)の抗菌性能の評価技術を生かして開発したという。

 一般に、Ag系抗菌剤の抗菌コートは、空気中の水分が抗菌剤に作用してAgイオンが放出され、それが細菌の細胞表面にある酵素と結合して細菌を不活化することによって抗菌効果を発揮する。従って、塗布膜表面のAgイオン濃度を高めることで細菌の増殖抑制効果の向上が期待できる。

 HYDRO AGは、水となじみやすい超親水性バインダーの中にAg系抗菌剤を分散することで、塗布膜表面だけでなく塗布膜内部の抗菌剤にも水分を作用させてAgイオンを供給する。これにより塗布膜表面のAgイオン濃度が高くなり高い抗菌性能を発揮する。効果の持続期間も延びるという。富士フイルムが性能試験を行ったところ、従来のAg系抗菌コートでは菌接触後1時間での細菌の減少率は約99%だったのに対し、HYDRO AGの抗菌コートは99.99%以上減少した。北里環境科学センターにおいて実施した、実際の室内に近い環境(気温25℃、湿度50%)で菌を付着させた抗菌性能試験でも、従来のAg系抗菌コートに比べて高い抗菌性能を発揮したという。

 従来のAg系抗菌コートには、水となじみにくい非親水のバインダーが用いられており、塗布膜表面に露出したAg系抗菌剤に水分が作用しないとAgイオンが溶出しなかった。塗布膜表面の抗菌剤のAgイオンは、抗菌作用を発揮するのに伴って消費される上、塗布膜表面に異物が接触すると抗菌剤自体が脱落し、抗菌効果が徐々に失われるという難点があった。

 なお、富士フイルムは、「国際モダンホスピタルショウ2014」(2014年7月16~18日、東京ビックサイト)に、同技術を用いたタッチパネル搭載機器向け抗菌液晶保護フィルムを出品する。