九州工業大学大学院生命体工学研究科教授の早瀬修二氏
九州工業大学大学院生命体工学研究科教授の早瀬修二氏
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 九州工業大学大学院生命体工学研究科教授の早瀬修二氏は、2014年7月10~11日開催のセミナー「有機エレクトロニクスの次の方向性を考える」で、色素増感太陽電池の最近の研究・開発状況について講演した。高効率化や低コスト化に向け、さまざまな技術の開発を進めているという。

 色素増感太陽電池とは、色素を使って太陽光を電気エネルギーに変換するタイプの太陽電池である。太陽光が色素に当たると、色素が励起して電子を放出する現象を利用している。シリコン系太陽電池よりも安く造れる可能性があり、形状や色の自由度も高いことから、次世代の太陽電池として期待されている(色素増感太陽電池の解説記事)。

 例えば、高効率化に関しては近赤外光の活用が挙げられる。従来の色素増感太陽電池は、ルテニウム(Ru)系色素を用いることで主に波長が400~700nmの可視光からエネルギーを得ていた。Ru系色素に加えて、波長が800~900nmの近赤外光によって励起する色素も加えたハイブリッド型とすることで、高効率化が可能になる。

 低コスト化に関しては、太陽電池セルの表面にコストの高い透明電極を使うのではなく、表面は単なる透明な樹脂またはガラスにして、その裏に電極となるポーラス(多孔質)金属を設ける方式(バックコンタクト型)を紹介した。電極の具体的な構造は、メッシュ形状の金属に二酸化チタンをスパッタリングしたシートである。表面を透明樹脂で覆った場合は、太陽電池セル全体をフレキシブルな形状にすることが可能である。

 早瀬氏は、これらの技術を用いた円筒型の色素増感太陽電池の研究・開発を進めている。フラット型と比較した場合の円筒型の利点は、(1)狭い場所にも設置しやすい、(2)封止が簡単、(3)リフレクター(反射板)を併用することでセルに直接当たらなかった太陽光からもエネルギーを得られる、などである(円筒型色素増感太陽電池の取り組みについての関連記事)。