韓国Samsung Electronics社が「2014 Samsung SSD Global Summit」(2014年7月1~2日、韓国ソウル市)で発表した、「Vertical NAND(V-NAND)」と呼ぶ3次元NANDフラッシュメモリーを搭載した「Samsung SSD 850 PRO(以下、850 PRO)」(関連記事1同2)。ここに採用したのが、同社が2014年5月末に量産を開始した第2世代(32層積層)のV-NANDだ(関連リリース1)。2013年8月に量産化した第1世代(24層積層)に比べて、メモリーセルの積層数を8層増やした(関連記事3同4)。

「2014 Samsung SSD Global Summit」の展示ルームで披露した、V-NANDを集積した300mmウエハー
[画像のクリックで拡大表示]

 第2世代のV-NANDでは、第1世代と同様に設計ルールが30~40nmのメモリーセルを積層しているとみられる。設計ルールの値は明らかにしていないが、現行の露光装置の1回露光の解像限界である38nm程度に設定しているようだ。そして第1世代と同じくMLC(2ビット/セル)技術を採用している。

 同社が第2世代で実現した32層という積層数はかねて、3次元NANDが平面構造のNAND(プレーナーNAND)に対してコスト競争力を持つための最低ラインになる数字とみられてきた。今回、これをクリアしたことで、第1世代ではOEM品にとどめてきたV-NAND搭載SSDを一般消費者向けに発売できた形だ。

32層積層に到達。登壇者はSamsung社 Senior Vice President, Flash Design Team LeaderのKye Hyun Kyung氏
[画像のクリックで拡大表示]

1チップの容量は「86Gビット」

 ただし、今回のイベントでSamsung社が強調したのはV-NANDの性能だった。コストについては「まだ十分に安いとはいえない」(Samsung社のNAND担当者)と認める。第2世代のV-NANDの1チップのメモリー容量は「86Gビット」(Samsung社 Senior Vice President, Flash Design Team LeaderのKye Hyun Kyung氏)という。128Gビット程度を1チップに集積可能とみられるが、コストバランスなどの観点からこの容量を選んだようだ(関連記事5)。

 今後はメモリーセルの積層数をさらに増やし、コスト競争力を高める考え。2015年には1チップのメモリー容量を256Gビットに高める狙いで、2017年にはメモリーセル積層数を100層前後にまで増やし、1Tビットを実現することを目指す。

 現時点では、V-NANDの応用は性能の高さや容量の大きさを生かせる、SSDに限られる。量産ボリュームを増やしてコスト低減を加速させるためにも、同社はSSD以外の用途を開拓したい考えだ。「2015年には、スマートフォンやタブレット端末への搭載を狙う」(Samsung社)としている。

2015年に256Gビット、2017年に1Tビットを目指す
[画像のクリックで拡大表示]