ディスプレー分野最大の学会「SID」の今年(2014年)の参加者は6000人以上に達した。成功と言われた昨年(2013年)が4600人程度なので、今年はさらに記録的な大成功ということになる。シンポジウムの参加者も2000人以上に達し、最終日まで各会場とも大変賑わっていた。この調子でディスプレー業界全体が上向きになってほしいものである。中国からの参加者は間違いなく増えていると思うが、日本からの参加者もかなり多かったように思う。

 今年のシンポジウムは、セッションのタイトルが細かく分かれていて、内容が分かりやすい。例えば有機EL(OLED)関連の場合には、「OLED Devices I, II, III」「OLED Materials」「Flexible OLED I, II」「Flexible AMOLEDs I, II」「Advanced OLED Driving」「Display Manufactureing:OLEDs」「OLED TV I, II」「OLED Lighting I, II」といった感じである。

フレキシブル関連のセッションが盛況

 印象としては、フレキシブル関連の有機ELセッションは盛況で、「Flexible AMOLEDs I, II」は立ち見が出るほどであった。内容的にもフレキシブル化を目指した発表が多く、有機ELのフレキシブル化は既定路線となりつつある。また、最終日の「OLED TV I, II」には非常に多くの参加者が詰めかけ、質疑応答でも多くの質問が飛び出し、この分野の関心の高さをうかがわせた。

 フレキシブル化の大きな課題の1つが薄膜封止技術である。従来は無機膜と有機膜を最低でも3層ずつ、計6層以上を重ねた構造が主流であった。無機膜で水蒸気透過度を十分に抑え、有機膜でゴミや変形による応力を吸収し割れにくくする。しかし、これを3~5回程度重ねないとパネル全面での欠陥を無くすことができず、非常に生産性が低いために実用化の大きなボトルネックになっていた。今回のシンポジウムでは、この構造を単純化した発表が相次いだ。

 韓国LG Display社はスマートフォン「G FLEX」でフレキシブル有機ELパネルの商品化に成功しており、今回の「SID Display Week」では「Display Application of the Year Gold Award」を受賞している(論文番号25.4)。G FLEXでは、次のような構造で下から積層していく。

バリアーフィルム(約50μm)
バリアーPSA(約50μm)
無機膜(2層目)
PCL(ポリマー)
無機膜(1層目)
OLED/LTPS TFT
PI(ポリイミド)
ガラス基板

 この構造で、最後にガラス基板側からレーザーを照射してガラス基板を剥がし、代わりに黒いフィルムをラミネートしてフレキシブル・ディスプレー・モジュールに仕上げている。また、基板が変形してもACF接触不良を起こしにくい特別なICバンプを新たに開発し、パネル端面からポリマー層を伝わって水分が侵入するのを防ぐためのダム構造も付加してある。こうした細かい改良は、さすが商品化で先行するメーカーである。

 リンテックは、フレキシブルディスプレー用のバリアーフィルムを発表した(論文番号6.4)。バリアー膜関連の発表は他にもあり、デバイス上のパッシベーション膜の性能を補う形でカバーガラスの代わりにバリアーフィルムを付加するという構造は今後増えるかもしれない。

 半導体エネルギー研究所(SEL)は、ガラス基板上に分離層とパッシベーション層を形成してTFT/有機ELを作成し、同じくガラス基板上に分離層とパッシベーションを形成してカラーフィルターを作成。両者を接着層で付けた後に分離層からガラス基板をそれぞれ物理的に剥がし、代わりにプラスチック基板を接着層で付ける提案をした(論文番号15.3, 25.1, 25.2ですべて同じ構造・プロセス)。パッシベーション膜には1μm程度のSiOxやSiNxなどのプラズマCVD膜を使用しているらしいが、詳細は不明である(関連記事)。