いよいよIoT時代の幕開けである。IoTの基盤を支えるセンサーネットワークは、環境発電電力のような微弱な電力で動作する必要がある。そのため、搭載するLSIもこれまでよりも格段に低消費電力化しなければならない。それには、微細化などのデバイス技術だけでなく、回路技術との協調が不可欠だ。

 「2014 Symposium on VLSI Technology」(2014年6月9~12日、米国ホノルル)では、デバイスと回路の協調技術を深く議論するために、技術シンポジウム/回路シンポジウム合同のジョイントフォーカスセッション「Design Technology Co-optimization II」(Session 17)が企画された。

 4件の発表のうち、2件が米University of Michiganと超低電圧デバイス技術研究組合(LEAP)による招待講演、残りは米Qualcomm社および台湾TSMCからの投稿論文である。特に2件の招待講演は、IoT時代に必要とされるLSIの姿を明確に示す素晴らしい発表だった。

チップの組み合わせを変えて多様なセンサーを実現

 まずUniversity of Michiganは、今すぐにでも使えるIoTシステムを紹介した(講演番号:T17-1)。IoTシステムを設計する上で重要な点として同大学が強調したのは、システムの可塑性である。IoTのアプリケーションは膨大で、個別にLSIを設計していては需要に追いつけない。

 そこで同大学は、既に存在するチップの組み合わせを変えることで(modular approach)、さまざまなアプリケーションに対応する方法を提唱している。これまでに、チップを低消費電力で組み合わせ可能とする新しいチップ間通信用バスプロトコル(MBus)を開発している(関連論文:C17-1)。

 この技術を使えば、スレーブ層にクロックジェネレータを設ける必要がなくなり、結果として動作時消費電力を低減できる。チップ間の通信は、2本の配線(入出力合せて4本)だけで行う。

 この手法を用いたチップ組み合わせ技術として、mmスケールのイメージセンサーや圧力センサー、温度センサーを紹介した。イメージセンサーの場合、プロセッサーチップとRFトランスミッションチップ、イメージセンサーチップを積層している。いずれのチップもMbusを搭載しており、Mbusを介してプロセッサーがRFトランスミッションやイメージセンサーを制御する。これらのチップは使い回しがきき、組み合わせを変えることで他のセンサーに早変わりする。