関西医科大学 健康科学科 科長の木村穣氏
関西医科大学 健康科学科 科長の木村穣氏
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 「食事や運動と体重変化の対応関係を記録していくと、患者はいろんなことに気づくようになる。気づきがあれば、人間は必ず変わる」――。関西医科大学 健康科学科 科長の木村穣氏は2014年6月11日、デジタルヘルスAcademy「『ウエアラブル』の本質を議論する」(主催:日経デジタルヘルス)において、「健康科学の専門医が指摘するウエアラブルへの要望」と題して講演。生活習慣病を予防するためには、患者自身が達成可能な目標を設定して成功体験を積み重ねられるようにサポートすること、そのためには食事や運動による体重の変化を「セルフモニタリング」するウエアラブル生体センサーの利用が必要となることを力説した。

 木村氏によると、セルフモニタリングによって「自己効力感」を得た患者は、積極的に生活習慣を改善するようになる。これは行動心理学にもとづいた「認知行動療法」と呼ばれるものだが、実際に行うには「セルフモニタリングのための記録が面倒」「グラフ化しないと変化が分かりにくい」「長期的に続けるためのインセンティブが不足」などの問題がある。また、セルフモニタリングの結果を評価して、患者にフィードバックする指導者を確保することもコスト的に難しかった。

 そこで、木村氏が勤務する関西医科大学 健康科学センターの肥満外来では、ウエアラブル生体センサーなどのIT機器を活用して、これらの課題の解決を目指している。具体的には、ブレスレット型の歩数計、体重計、血圧計などで記録した各種データをスマートフォン経由でクラウドシステムに自動転送する。システム側では、まず自動解析の結果を患者にフィードバックし、必要に応じて医師が患者を指導する。

 こうした遠隔指導による減量効果については、2007年度の経済産業省「先進的保健指導サービス推進プロジェクト」が検証している。それによると、IT機能および通信機能付き健康測定機器を使用してフィードバックを受けたグループが3ヵ月で約2.6kgの減量に成功したのに対して、IT機能のみの利用でフィードバックを受けないグループの減量は約1.7kgにとどまったという。

 関西医科大学では今後、「身体活動と抗動脈硬化」「身体活動の評価(=生活習慣の変化)とメンタル状況の評価」、さらには介護予防についても、ウエアラブル生体センサーの応用を検討している。