講演する杤久保氏
講演する杤久保氏
[画像のクリックで拡大表示]

 横浜市立大学医学部社会予防医学 寄附講座・特任教授の杤久保 修氏は、2014年6月11日に東京都内で開催されたセミナー「『ウエアラブル』の本質を議論する ~医療現場・フィットネス・ビジネスモデルなどの視点から“真価”を探る~」(主催:日経デジタルヘルス)において、ウエアラブル型のセンサー端末が生活習慣病予防に果たす役割について講演した。講演タイトルは「生活習慣病予防に求められるウエアラブルとは ―健康長寿社会を目指して―」である。

 杤久保氏は、日本人の死亡要因の約60%を、がんや心疾患など生活習慣がかかわる疾患が占めることを指摘。特に、健康長寿を実現するためには、寝たきりの最大の要因となる脳血管疾患(脳卒中)を予防することが重要とした。

 脳卒中の予防には「SOS」戦略が有効という。S(Salt:食塩摂取量の適正化)、O(Obesity:肥満の予防)、S(Sleep:活動と休養の管理)の三つである。例えば、食塩の過剰摂取は高血圧の大きな要因となる。1日当たり1gの減塩によって血圧を1~2mmHg下げることができ、国民の平均血圧を2mmHg下げられれば、脳卒中患者は約6%減少する見込みという。

 SOS戦略を実行に移すためには「医者がアドバイスしても効果は薄く、血圧などを自分でモニタリングし、管理することが欠かせない」と杤久保氏は指摘する。そしてそのツールとなるのが、活動や休養のリズムを測る「生活センサー」や、血圧や血糖などを測る「生体センサー」だという。これらのセンサーでは、アクセサリーのように身体に装着でき、日常生活の中で負担なく使い続けられることが重要とする。その具体的事例として、カロリーやストレス、睡眠を計測できるセイコーエプソンの腕時計端末などを紹介した。

 こうしたウエアラブル型のセンサー端末は、生体情報の経時変化を測れることが大きな魅力という。医療現場では従来、生体情報に関しては「ある時点での測定にとどまり、“時間”の概念が欠落していた」と杤久保氏は話す。今後、センサー端末のさらなる小型化などを実現する新素材や技術開発が求められるとした。