図1 新型モジュール。写真は4個を連結した状態のもの
図1 新型モジュール。写真は4個を連結した状態のもの
[画像のクリックで拡大表示]
図2 RC-IGBTの概要
図2 RC-IGBTの概要
[画像のクリックで拡大表示]
図3 モジュール構造の比較。下が新型
図3 モジュール構造の比較。下が新型
[画像のクリックで拡大表示]

 富士電機は、産業用IGBTモジュールの新製品を「PCIM Europe 2014」(2014年5月、ドイツ・ニュルンベルク開催)で発表した(図1)。特徴は、同社従来品(Vシリーズ)に比べて、信頼性が高いことと小さいことである。具体的には、耐圧1200V級のモジュールで、50℃でのパワーサイクル耐量が1×108(10の8乗)サイクルと、同耐圧の同社従来品に比べて、20倍に高めた。 

 新型モジュールの外形寸法は、横60mm×奥行き22mm×高さ13mm。同社従来品に比べて体積はわずか18%ほど、横の長さと奥行きの積である床面積も従来品の42%ほどである。2014年10月にサンプル出荷を開始し、2015年6月からの量産を予定する。エレベーターや汎用インバーター装置、パワーコンディショナー、UPSなどに向ける。

 IGBTチップとモジュール構造に工夫を施し、熱抵抗を小さくしたことで、信頼性の向上と小型化を実現した。従来品では、IGBTモジュールには、IGBTチップの他、還流用のダイオードチップを実装していた。今回の新型モジュールでは、IGBTとダイオードを1チップ化した「RC-IGBT」を採用した。この1チップ化によって、IGBTとダイオードをぞれぞれ別に準備するよりも、パワー素子のチップ面積を約26%削減できた(図2)。

 1チップ化によって、放熱性が向上し、従来と同じ電流を流した場合、チップ温度を低くできるという。放熱性が高いのは、IGBTチップ単体やダイオードチップ単体と比べてRC-IGBTの方が面積が大きいからである。

 なお、RC-IGBTを実用化するのは、今回のモジュール製品が最初だという。

 新型モジュールでは、部材を省くなどして、熱抵抗を約60%小さくし、小型化を実現した。パワーモジュールは、一般に、上からIGBTチップやダイオードチップといったパワー素子、DCB基板と呼ばれる絶縁基板、金属製のベースプレートの順で構成されている。パワー素子とDCB基板の間、DCB基板とベースプレートの間にははんだなどの接合材料がある。DCB基板は、セラミックの上下をCu(銅)板で挟んだ構造を取る。

 これに対して新型モジュールでは、金属製のベースプレートを省いて熱抵抗を小さくした。従来品では、Cuのベースプレートを利用していた。ベースプレートの代わりに、セラミック基板の上下のCu板を厚くした(図3)。

 Cu板を厚くすると、その分熱応力が大きくなる。その対策として、例えば、モジュールの封止材に新開発したエポキシ樹脂を適用した。詳細を明かさないが、ある材料メーカーと富士電機が共同で開発したものだという。

 信頼性を高めるために、パワー素子上面と、パワーモジュールの外部端子をつなぐ実装方法も変えた。従来はワイヤーボンディングだったが、新製品ではCuピンを利用する。