昨年のAustinから今年のDAC(Design Automation Conference)はSan Franciscoに戻ってきた。シリコンバレーから鉄道で通いやすくするために、Caltrainの駅から会場までの無料バスが運行されていることもあり、参加者は昨年の50th DAC(DAC 2013)より多いようだ(日経テクノロジーオンライン関連記事1)。

図1●左が MathWorksのJim Tung氏、右がFord Motor社のJames Buczkowski氏 日経エレクトロニクスが撮影。
図1●左が MathWorksのJim Tung氏、右がFord Motor社のJames Buczkowski氏
日経エレクトロニクスが撮影。
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 今年の51st DAC(DAC 2014)では自動車は3つの重点テーマの1つで、自動車関連のセッションがとても多く、基調講演の1つも自動車関連となった(同関連記事2)。そのの自動車関連の基調講演は、異例の2人体制だった。講演中、2名の講師が壇上に立っていた。一人は米Ford Motor社のJames Buczkowski氏(Henry Ford Technical Fellow & Director, EE System)。もう一人は、米The MathWorks社のJim Tung氏(MathWorks Fellow)である(図1)。

 基調講演の講演タイトルは「Delivering Smart Automobiles Through Electronics and Software」だった。FordのBuczkowski氏は、35年の同社での経験を生かして、自動車メーカーの立場から自動車システムの現状の説明と設計自動化領域における期待を、Jim Tung氏はMathWorksでの25年の経験を生かして自動車のような複雑なシステム系におけるモデルベース設計の重要性について語った。

 この講演での全体の思想は、「豊かな経験をどのようにシステム(自動車)がユーザーに与えられるか」である。最初にBuczkowski氏は経験を概念的に定義した。例えば、経験は、Simple, Intuitive, Seamless, Safe, Secureであること。人間をよく知ることや、必要とされる前に準備ができていること、重要な顧客を創出することが大切だと述べた。「これらは技術ではないが、技術は経験を具体化しなければならない」とも語った。