マツダ車両開発本部電子開発部電子先行技術開発グループマネージャの大池太郎氏
マツダ車両開発本部電子開発部電子先行技術開発グループマネージャの大池太郎氏
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 クルマがネットとつながる時代に、自動車メーカーは何を大事にすべきか――。マツダのカー・コネクティビティー・システム「Mazda Connect」の開発は、この哲学的な問いから始まった。

 Mazda Connectは、端的にいえば、クルマの運転中にスマートフォンの機能を利用するためのシステムである。運転中のスマホ利用は、当然ながら安全性の懸念がある。しかし、スマホの便利な機能を運転中にも利用したいというニーズは根強く、その流れにあらがうことは難しい。ならば、運転中でもスマホを安全に利用できるようにすべきではないか。それが、マツダのたどり着いた結論だった。

 もちろん、運転中にスマホそのものを操作することは危険だ。運転中に、スマホを操作することなくその機能だけを利用する。それを実現するために、マツダはまず「安全なHMI(Human Machine Interface)」を確立し、この定義に基づいてデバイスやソフトウエアを開発した。

不注意運転の要因を最小化

 安全なHMIの確立とは、不注意運転の要因を最小化することに外ならない。マツダ車両開発本部電子開発部電子先行技術開発グループマネージャの大池太郎氏によれば、不注意運転の要因は次の3つに大別できるという。すなわち、「見る脇見」「意識の脇見」「操作」である。見る脇見とは、ドライバーの目(視線)が前方から離れることを意味する。一方、意識の脇見とは、「ドライバーの心が前方から離れる」(同氏)ことだ。そして、操作とは、スイッチなどを操作するためにステアリングハンドルから手を離すことである。

 Mazda Connectを構成するデバイスやソフトは、これら不注意運転の要因を極力抑えるという観点で開発した。例えば、さまざまな情報を表示するディスプレー(集中センターディスプレー)は、読みやすさを最優先に文字の大きさや行間、表示件数を決めている。具体的には、視距離(ドライバーの目からディスプレーまでの距離)が750mmであれば、最も読みやすい文字の大きさ(縦の寸法)は5.3mm、行間はその1.2倍の6.4mmとなる。これらの数値は、人間工学的な根拠に基づいており、国際標準(ISO)でも定められている。情報の表示件数については、米国の心理学者であるGeorge Miller氏が発見した「マジックナンバー」(人間が瞬時に記憶できる情報の数)の7±2に従って、5件とした。このように理詰めで設計していくと、ディスプレーの表示部に求められる高さ方向の寸法は90mmとなり、7型のディスプレーが最適という結論になる。「7型のディスプレーを採用したのは、決して、それが流行しているとか、他者が使っているといった理由ではない」(大池氏)。