インテル日本法 戦略企画室 ダイレクタ 名古屋大学客員准教授の野辺継男氏
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2016-2020の車載ICTを予測
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 インテル日本法人 戦略企画室 ダイレクタ 兼 名古屋大学客員准教授の野辺継男氏は、2014年5月28日に開催された「シリコンバレー発、つながるクルマの最前線」(日経Automotive Technology主催)に登壇し、「情報通信技術の発展がクルマをどう変えるのか?」というテーマで講演した。

 野辺氏はまず、スマートフォンがITの広い範囲でソリューションを提供していることを紹介したうえで、同じことがカーナビゲーションの世界でも起きつつあることを力説した。

 今では“ガラケー”と呼ばれる日本の携帯電話だが、iPhoneが登場した2007年の時点において、カメラ、Bluetooth、ワンセグ、カラーディスプレー、フルブラウザなど、現在のスマホとほぼ同じ要素をすでに搭載していた。当時、日本国内の携帯電話ユーザーの7割~8割は、音声通話だけでなくiモードなどのデータ通信を利用していたが、米国ではデータ通信を利用する携帯電話ユーザーは3割程度に過ぎなかった。

 では、なぜガラケーはiPhoneになれなかったのか。野辺氏はその理由を「クラウド側のサーバーにデータを置いてソリューションを提供することができなかったため」とする。そして、同じことがカーナビゲービョンでも起こりかねないという。「今後はカーナビをクラウドに接続していろんなサービスを提供するようになる。そうなったらハードウエアの作り込みを主体にした日本のカーナビは、ガラケーと同じように置き換えられてしまうかもしれない」(野辺氏)。

 カーナビを含めて、2010年以降のICTには大きな変化が起きている。Google Mapsなどの様々なクラウドサービスが提供されるようになると同時に、タブレットやスマホのような非PC端末が広く使われるようになった。「HTML5がOS機能の一部を代替してプラットフォーム化したことで、ハードウエア非依存のマルチデバイス化が進展している」(同氏)。

 こうしたクラウドサービスとマルチデバイスを前提とする「汎用的ICTアーキテクチャー」はクルマの世界にも浸透しつつある。今後はタブレット、スマートフォン、IVI(車載用情報端末:in-vehicle infotainment)といったマルチデバイスで、様々なサービスが受けられるようになる。「同じ車に10年乗り続けたとしても、スマホが外の世界との“ハブ”になることで、いろんなソリューションを享受できる」(同)。米Apple社のiOS拡張機能「CarPlay」や、米Google社が主導するアライアンス「Open Automotive Alliance」は、そうした世界を狙ったものだという。

 ネットワークに接続された「コネクテッド・カー」は、クラウド側のサーバーに様々なデータを送信する。そうして収集された“ビッグデータ”によって、ユーザーは様々なアプリケーションを利用できるようになる。例えば、「渋滞情報にもとづいたダイナミックなルート選択」「ワイパーの動きから判断したリアルタイム気象情報」「EV用充電スポット案内」などだ。「ADAS(先進運転支援システム:advanced driving assistant system)は、クラウドからの情報とローカルの情報を参照しながら実現するものになる」(同氏)。