[画像のクリックで拡大表示]

 産業技術総合研究所(産総研)発のベンチャー企業であるグローバルヘルスの田中寿志氏(代表取締役)は、2014年5月26日に開催された「次世代医療機器サミット2014」(主催:日経デジタルヘルス)で講演した。講演タイトルは「超音波診断装置を家庭に、医療機器のパラダイムシフトを」。

 グローバルヘルスは、産総研を中心とする産学官連携のもとで、小型・軽量・低価格をうたう非医療用途の超音波診断装置「みるキューブ」を製品化した実績を持つ。従来の超音波診断装置が主に医療用だったのに対し、みるキューブは身体組成(皮下脂肪や筋肉、骨)計測に特化した非医療用の装置である。フィットネスクラブやエステティックサロンなどへの多数の採用実績があるという。

 加えて同社は、拠点を置く横浜市と連携し、家庭で使えるモバイル型の超音波診断装置の開発を進めている。みるキューブと同様に小型・軽量・低価格を実現するとともに、スマートフォンやタブレット端末との連携機能も搭載する考えである。現在、外部と連携してMEMSタイプの超音波センサーや専用LSI(ASIC)の開発を進めており、「製品化に向けて光が見えてきたところ」(田中氏)だという。

 さらに同社は横浜市と連携して、ヘルスケア分野では「高齢者健康づくり事業」を、医療機器開発分野ではリンパ浮腫患者に向けた「皮下組織硬度計測用装置の開発」をそれぞれ進めている。高齢者健康づくり事業では、高齢者の筋肉量をみるキューブで測定し、寝たきり防止に向けた判定に使う。皮下組織硬度計測用装置の開発については、乳がんの術後患者などが患いやすいリンパ浮腫の症状や治療効果の判定に使える装置を開発するという。

 田中氏は、開発中のモバイル型の超音波診断装置をスマートフォン購入者にオプションとして無料で提供できるような装置に仕上げたいと話す。ハードウエアで採算を取るのではなく、購入者が測定したデータを収集・解析することを通じて生まれる「健康情報コンテンツ」で採算を取りたい考えだ。