講演する鈴木氏
講演する鈴木氏
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 シーメンス・ジャパン 超音波ビジネス本部 コラボレーション部 部長の鈴木 陽一氏は、2014年5月26日に開催された「次世代医療機器サミット2014」(主催:日経デジタルヘルス)で講演した。講演タイトルは「ケーブルレスの超音波診断装置、ついに登場 ~UWB技術でワイヤレスを実現~」である。

 鈴木氏は、シーメンス・ジャパンが2014年4月に発表したケーブルレスのプローブを搭載した超音波診断装置「ACUSON Freestyle」の実現技術を語った(関連記事)。同社によれば、ケーブルレスのプローブを搭載する超音波診断装置は業界初である。

 ケーブルレス化に当たっては、利用する無線通信技術に三つの要件が求められたと鈴木氏は述べた。(1)送信電波の強度が低く、他の機器への影響を避けられること、(2)大容量のデータや動画を転送できること、(3)他の機器からの電波干渉に強いこと、である。そしてこれら三つを満たす技術としてUWBを採用した。

 ただし、UWBを採用するに当たっては、超音波診断装置に固有の問題を克服する必要があったという。具体的には、撮像データのA-D変換後のデータ量は数十Gビットに達し、データ転送速度が300M~400Mビット/秒と高いUWBでもリアルタイムに撮像データを転送することが難しい。また、A-D変換器の後段の回路(整相加算器、RF処理部、信号処理部)をすべてプローブに搭載しようとすると、プローブの寸法が大きくなりすぎるという。

 今回、シーメンスは整相加算器に工夫をこらし、整相加算器の一部と、RF処理および信号処理の機能をモニター側に担わせることでこの問題を克服した。これにより、必要なデータ転送速度を300M~400Mビット/秒に抑えるとともに、小型のプローブを実現できたという。電波に指向性を与えるために、内蔵するアンテナにも工夫を施した。

 超音波診断装置は一般に、腹部や胸部の診断に使われることが多い。これに対し、シーメンスはケーブルレスの超音波診断装置を、整形外科領域などに向ける考え。手術には清潔な環境が求められるためケーブルレスという特徴が生きることに加え、術者の動きの自由度を確保しやすいからだ。