メディカル・イメージング・コンソーシアム理事長 国立成育医療研究センター 社会・臨床研究センター副センター長 医療機器開発部長の千葉敏雄氏
メディカル・イメージング・コンソーシアム理事長 国立成育医療研究センター 社会・臨床研究センター副センター長 医療機器開発部長の千葉敏雄氏
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 「8K内視鏡では引いた位置から撮影できるため、広々とした空間で手術できるようになる」---メディカル・イメージング・コンソーシアム理事長 国立成育医療研究センター 社会・臨床研究センター副センター長 医療機器開発部長の千葉敏雄氏は、2014年5月26日に開催された「次世代医療機器サミット 2014」(日経デジタルヘルス主催、東京・品川)に登壇し、8K内視鏡の優位性と技術的課題などを講演した。

 8K内視鏡とは、8K×4Kの映像信号、いわゆる「スーパーハイビジョン(UHD:ultra high definition)」を適用した内視鏡のこと。人間の視力に換算すると4.27に相当し、「およそ人間の眼では到達できない」(千葉氏)レベルの高画質を得ることができる。

 千葉氏によると、現在、すべての手術のうち内視鏡を使っているものは3割から4割程度にとどまっているという。内視鏡を使った手術は、術野(手術する部分)近くに三つか四つ程度の小さな穴を開けて、そこから内視鏡とともに鉗子(かんし)、剪刃などを挿入して実施する。「患者への負担が小さく、手術の翌日には退院して普通に生活できる」(同)。これに対して、腹部や胸部を大きく切開して医者が術野を直接見ながら施術する場合、最低でも術後1週間は安静にしておく必要がある。厚生労働省では、すべての手術の7割で内視鏡を使うことを目標にしているという。

 この内視鏡手術に8Kを採用するメリットは大きく三つある。第1は、新しい「手術空間」が生まれること。8K内視鏡では術野から引いた位置から撮影しても、ズームで鮮明な映像が得られる。このため、患部近くに広々とした空間を確保でき、手術器具と内視鏡がぶつかることが避けられる。引いた位置から広い範囲を高解像度で撮影することもできるため、「万が一、周辺部で出血があっても見落とさずに済む」(同)。

 第2のメリットは、8K内視鏡を術野に近接させることで、今まで見えなかったものが見えてくること。例えば、微小な血管・リンパ管・神経はこれまでの画像精度では識別することが難しく、リンパ管のがん転移などを見つけにくかった。8K内視鏡では、これらの識別が容易になる。「肉眼ではほとんど見えない10-0縫合糸(直径0.020~0.029mm)も見えるようになる」(同)。